宇宙天気
掲載:2022年10月28日
用語集
太陽活動によって引き起こされる地球近くの宇宙環境条件の変化を「宇宙天気」といいます。太陽は地球上の生物にとって不可欠な光や熱を放つだけでなく、有害なX線や紫外線、高温の電離気体も放出しています。地球にはこれらから地表を守る働きをする大気と磁場があるものの、太陽活動の活発化は人間の社会活動に様々な影響を与えることがわかっています。
例えば、太陽表面で発生する爆発現象である「太陽フレア」は電磁波や電気を帯びた粒子を含む「太陽風」を爆発的に放出し、「太陽嵐」として地球に影響を及ぼします。これにより短波通信障害や測位(GPS)の誤差といった不具合が生じる可能性があり、航空運用への多大な影響から航空機の航路が変更されることもあります。
ほかにも、太陽高エネルギー粒子の影響によって人工衛星の障害や宇宙飛行士の被曝のリスクが生じたり、地磁気の乱れによって送電施設に障害が発生したりする可能性があるなど、宇宙天気による影響は多岐にわたります。
宇宙天気が社会活動に影響を与えた事例としては、1989年に太陽フレアの影響によりカナダ・ケベック州で大規模停電が発生した例や、2003年に大規模な磁気嵐が生じ、多数の衛星障害が発生した例などがあります。2022年2月には米スペースX社が、ケネディ宇宙センターから打ち上げたスターリンク衛星49基のうち最大40基が磁気嵐の影響で軌道を上昇できず、大気圏に再突入すると発表しました。
太陽活動の影響を受けやすいのは極域をはじめとする高緯度地域であることなどから、日本では宇宙天気のリスクは見逃されがちな傾向がありました。しかしながら、約11年周期で活発と静穏を繰り返すとされる太陽活動は2025年頃に次回のピークを迎えると予想され、近年、各国が警戒を強めています。
日本では、宇宙状況把握や衛星の開発・運用、通信・放送、衛星測位等の安定利用に寄与するため、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が24時間365日の有人運用による「宇宙天気予報」を配信しています。
また、総務省は2022年1月から「宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会」を開催しており、6月に公表した報告書では「極端な宇宙天気現象がもたらす最悪シナリオ」を策定し、国家全体として危機管理にあたるべきであるとしています。