多様化する学生像と企業の新たな対応を分析、セキュリティ人材の確保・育成に関するレポートを公開 JNSA
日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)はこのほど、セキュリティ人材の採用・育成に関する最新の実態調査レポートを公開しました。今回の調査では、セキュリティ人材を求めている企業10社にインタビューを実施し、過去に行った学生アンケート結果を踏まえ、企業と学生の価値観の変化や取り組みを多角的に分析。今後の人材育成や採用活動における企業の対応を紹介しています。
近年の学生の傾向としては、「安定志向」と「スキル志向」に二極化しつつあり、希望する働き方が多様化しているとともに社会貢献への関心が高いという特徴があるため、企業はそれぞれに適したアプローチだけでなく、自社の社会的役割についても積極的に発信していく必要があると分析しています。
採用活動の現場では、オンライン採用の定着が進む一方で、学生と対面での接点を持つ重要性に言及しています。企業がSECCON(情報セキュリティコンテスト)やインターンシップ、出前授業などを通じて早期から学生との関係性を築こうとする動きが活発化していることに触れ、内定者に対する生活支援や継続的なフォローアップを行う企業の対応などを取り上げています。
また、学生のキャリア形成に関する考え方について過去のアンケート調査結果では、「所属する会社にこだわらず(副業なども実施し)キャリアを築きたい」と答えた人が63.36%となり、転職を視野に入れた働き方を意識している学生が多いという傾向が見られました。企業は転職を前提とする学生たちとの長期的な関係構築を視野に入れた取り組みを実施しており、カムバック制度やアルムナイ同士のつながりを作るなど制度面や組織面からも充実させているという見解を示しました。
人材育成においては、企業が専門職であるセキュリティ人材に対してもビジネスマナーやコミュニケーション研修を重視していることに加え、技術研修では学生時代の学習進度を考慮するなどきめ細やかな指導を実施している旨を報告。技術的な社内イベントを通じた交流や、大学卒や専門学校卒など学歴や経験の異なる人材が互いに刺激し合い成長できる機会を作るなど各社工夫している実態が明らかとなりました。
企業が勉強だけでなくボランティアやスポーツなどの課外活動を経験した学生の対応力を高く評価している、という声を紹介した上で、学生が自らの経験とそこから得られた学びを明確に意識し、主体的にキャリアを考える力を育むことへの期待が高まっていると指摘しました。教育機関に対しては今後、学生・企業・教育機関それぞれが今後の業界発展を見越し、産学連携で一緒に取り組む機会が重要であると提言しています。