経済産業省は5月23日、「Society5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会」と「デジタル人材のスキル・学習の在り方ワーキンググループ」が取りまとめた報告書「スキルベースの人材育成を目指して」を公表しました。同報告書では、DXの最大の課題であるデジタル人材育成について「スキルベースの人材育成」が強く期待されると記されました。
Society5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会は2024年10月から全6回に渡ってデジタル分野でのスキルギャップや人材育成の課題、IT・デジタルスキル試験制度の見直しについて議論を行いました。具体的には、日本の労働市場においてはスキルを持つ人が十分に評価されず、個人の学びやキャリア形成のモチベーションが高まりにくいという課題があると指摘。その結果、DX推進の現場でスキルギャップが生じ人材不足が深刻化していると現状を整理しました。今後は、個人がどのようなスキルを身につけ、どのような仕事に就きたいかを自ら考え、学び、キャリアを築けるような仕組みの実現が必要だとして報告書は取りまとめられました。個人がリスキリングを通じて最適な職業を選択できるということは、企業においてはDX戦略を実現するために必要な変化であると明記されています。
報告書は全4章構成です。第1章では、デジタル人材育成を取り巻く現状と課題などをまとめ、続く第2章では、スキル可視化▽スキルベース組織▽スキル情報の活用▽スキルタクソノミーの活用――などについて述べ、スキルベースの人材育成に向けた方向性について論点が整理されました。
論点整理を踏まえ、第3章ではIPAにおいて「デジタル人材育成・DX推進プラットフォーム」(仮称)の検討が進められていることを記載しています。このプラットフォームが学びの道標となり、キャリア形成における最短かつ最適な経路を提示するとともに、スキルを積み重ねる喜びや、個人が主体的にキャリアを築くことを支援する仕組みになるとしています。例えば、保有スキルや資格情報をデジタル資格証明(デジタルクレデンシャル)の形で発行し、第三者に示すことができるようになるなどと記されています。
最終章の第4章では、最新のデジタルスキル標準に基づき官民で人材育成体系を形成することが示されました。具体的にはITスキルを認定する国家試験「情報処理技術者試験」について段階的に進化させるとともに、拡大しつつある民間学習サービスや民間検定の市場とも相互に補完しながら、社会全体でデジタル人材育成の基盤形成を志向する必要があると提言しました。