金融機関が実施する内部監査の高度化を推進している金融庁は9月10日、モニタリングレポート(※)を公表しました。昨年10月に公表した中間報告に続くもので、中間報告で示したモニタリングにおける論点3つについて金融機関のその後の取り組みを事例とともに紹介しています。また、金融庁の問題意識と期待水準についてもまとめました。
それによると、内部監査の高度化に向けた取り組みは、規模の大小よりも経営陣の意識の差が大きく影響していると指摘、経営陣の認識が低い場合は内部監査の目的や役割が共有できず、経営陣が認識している内部監査の水準と実際の水準が乖離しているケースがあるとしました。また地域金融機関においては取り組みの差が拡大したと指摘しました。
中間報告で示されたモニタリングの論点は、経営陣や監査委員・監査役による内部監査部門への支援▽内部監査部門の監査態勢高度化・監査基盤強化▽被監査部門に対する内部監査への理解・浸透やリスクオーナーシップ醸成――の3つです。今般公表したレポートではこの論点に沿って好事例と課題事例がまとめられました。
また、金融庁では内部監査の成熟度を4段階に分けており、最も成熟度が高い第4段階に向けた好事例も示しました。具体的には、機動的な監査手法や経営環境の変化に対応した監査形態などを取り上げています。証券・保険会社においてアジャイル型監査の手引書を整備した事例では、経営陣から緊急要請を受けて実施する監査やプロジェクト監査を想定して整備が進められました。
金融機関を取り巻く環境が変わり、監査の対象領域は拡大しています。レポートでは、リスク・アセスメントの網羅性を確保することや、グループ・グローバルな観点で監査態勢を構築すること、外部専門機関の活用などを挙げて、金融機関に内部監査の高度化を促しました。
※金融機関の内部監査の高度化に向けたモニタリングレポート(2024)