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モデル・リスク管理原則の公表から3年が経過、「金融機関のモデル・リスク管理の高度化に向けたプログレスレポート(2024)」を公表 金融庁

掲載:2024年12月26日

リスクマネジメント速報

         
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金融庁はこのほど、「金融機関のモデル・リスク管理の高度化に向けたプログレスレポート(2024)」を公表しました。金融機関においてはモデル・リスク管理が重要であり、金融庁は2021年11月に「モデル・リスク管理に関する原則」(以下、モデル・リスク管理原則)を公表しました。今般公表されたレポートはこの原則を公表した後の金融機関の取り組みについて取りまとめたものです。モデル・リスク管理を高度化することによって、第1線の理解と、第1線と第2線のコミュニケーション活性化につながったなどとする経営上のメリットなども併せて紹介されています。

モデル・リスク管理原則は、金融システム上重要な金融機関を対象にモデル・リスクを管理する態勢の整備を求めるものです。具体的には、本邦G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)、D-SIBs(国内のシステム上重要な銀行)、金融安定理事会(FSB)により選定されたG-SIBs(本邦G-SIBsを除く)の本邦子会社のうち金融庁によるモデルの承認を受けている金融機関が適用対象となります。この原則では、重要な概念として、3つの防衛線(スリーラインモデル/スリーラインディフェンス)▽モデル・ライフサイクル▽リスクベース・アプローチ――の3つが挙げられています。そして具体的には、8つの原則(※)が盛り込まれています。ただ、ルール・ベースではなく原則ベースのアプローチとなっているため、実務ではどのように進めていけば良いのか分からないといった声も聞かれたとして金融庁は金融機関の取り組みを推進する目的で原則の適用対象機関の取り組みを整理し公表することにしました。適用対象金融機関だけでなく、他の金融機関での自主的な取り組みも後押しする狙いがあります。

公表されたレポートでは、適用対象金融機関が原則に即した態勢整備を行い、実務運営を本格化させていることが確認されたと評価しています。ただ、モデル・リスク管理の高度化は途上の段階であるとし、課題もあると指摘しました。具体的には、子会社を含むグループ・グローバルベースでの一貫的・計画的な管理▽モデル・ライフサイクル管理を継続するための必要なリソース確保▽AIモデルのガバナンス――などを挙げています。AIモデルのガバナンスについては適用対象金融機関におけるAIモデルへのガバナンス対応・検討状況がまとめられており、「AIモデルを複数認識し、モデル・インベントリーに含んでいるが、第2線による検証は今後実施する予定」や「AIモデルを複数認識し、モデル・インベントリーに含んでいる。モデル・リスク管理としては、インプットとアウトプットの挙動をストレステストのアプローチで捉えていくことを重要と認識。外部リソース等も活用しながら専門的な知見・スキルの向上を図りつつ、モデル・ライフサイクル管理の在り方を継続検討している」などとする金融機関の取り組みが記されています。

※8つの原則は次のとおり。(原則1)取締役会等及び上級管理職は、モデル・リスクを包括的に管理するための態勢を構築すべき(原則2)金融機関は、管理すべきモデルを特定し、モデル・インベントリーに記録した上で、各モデルに対してリスク格付を付与するべき(原則3)金融機関は、適切なモデル開発プロセスを整備すべき。モデル開発においては、モデル記述書を適切に作成し、モデル・テストを実施すべき(原則4)金融機関は、モデル・ライフサイクルのステージ(モデルの使用開始時、重要な変更の発生時、再検証時等)に応じたモデルの内部承認プロセスを有するべき(原則5)モデルの使用開始後は、モデルが意図したとおりに機能していることを確認するために、第1線によって継続的にモニタリングされるべき(原則6)第2線が担う重要なけん制機能として、モデルの独立検証を実施すべき。独立検証には、モデルの正式な使用開始前の検証、重要な変更時の検証及びモデル使用開始後の再検証が含まれる(原則7)金融機関がベンダー・モデル等や外部リソースを活用する場合、それらのモデル等や外部リソースの活用に対して適切な統制を行うべき(原則8)内部監査部門は、第3線として、モデル・リスク管理態勢の全体的な有効性を評価すべき