情報処理推進機構(IPA)は6月26日、日米独3カ国におけるDXの取り組みを戦略・技術・人材の観点から調査した「DX動向2025」を公表しました。IPAはこれまでも「DX動向2024」や「DX白書2023」などを取りまとめており、経年変化や3カ国比較による分析などを掲載しています。DXによる経営面の成果について、日本企業は「コスト削減」と回答した企業が多かった一方、米独の企業は「利益増加」や「売上高増加」「顧客満足度」と回答する企業の割合が高く、成果内容に大きな違いがあることがわかりました。
DXの成果について「成果が出ている」と回答した企業は、日本が全体の57.8%で688社(母数は1,535社)、米国は全体の87.0%で340社(同509社)、ドイツは全体の81.7%で299社(同537社)でした。米独は全体の8割以上が「成果が出ている」と回答しています。なお、日本企業では「成果が出ている」と回答した割合は2023年度調査で64.3%、2022年度調査では58.0%となり、伸び悩んでいると指摘しました。
日米独の成果が出ている項目について示したレーダーチャートによると、日本企業では最も数値が高かったのは、「コスト(人件費・材料費等)削減」で71.1、次いで「製品・サービス等提供にかかる日数削減」が30.7、「顧客満足度」が22.7と続きました。一方、米国では「利益増加」が最も高く65.7、次いで「売上高増加」が65.0、「顧客満足度」が60.9でした。ドイツでは「売上高増加」が60.2、次いで「利益増加」が59.5、「顧客満足度」が55.9と続きました。
企業間でデータを連携し共有することは、新たな価値創造や顧客満足度向上に寄与し、利益をもたらすといわれています。しかし、日本においては「他社とのデータ連携やデータ提供を行っていない」と回答した割合が75.1%と突出しており(米国19.8%、ドイツ27.0%)、データ連携を実施していない企業の割合が米独に比べて非常に高い結果となりました。
「研究開発の関係機関とのデータ連携を行っている」と回答した日本企業の割合も5%未満と低く、米国の34.8%、ドイツの37.1%と差が開きました。「政府や大学、非営利団体のオープンデータの取り扱いのために、データを提供している」と回答した企業の割合も日本では4%未満でしたが、米国では33.6%、ドイツでは27.4%でした。バリューアップに向けた「外向き」のデータ活用が進んでいないとIPAは指摘しています。
調査では、サイバーセキュリティ対策の実施状況についても尋ねました。それによると、日本企業は米独よりも多くの対策項目において実施率が高いことがわかりました。例えば、「情報セキュリティに関する最新動向を収集している」と回答した企業の割合は日本では60.2%、米国では47.9%、ドイツ企業では40.4%でした。「情報セキュリティ対策を適宜、見直ししている」についても、日本は59.4%、米国では39.9%、ドイツでは33.0%となりました。「緊急時の対応や復旧のための体制を整備している」と回答した企業の割合も日本は49.9%、米国は35.2%、ドイツは33.5%でした。
なお、調査は2025年2月10日から3月28日にかけて実施されました。