
BCP(BCM)担当者に役立つ資格にはさまざまな種類がありますが、その中でもBCI(事業継続協会)が認定しているCBCIがおすすめです。CBCIは、2023年に改訂されたGood Practice Guidelines 7.0 (GPG7)をベースにしているため、CBCIを取得することで、国際社会でもBCMの実務者として認知されるでしょう。さらに、BCIが提供するその他の資格レベルや、BCI以外の機関の資格を申請する際にも、CBCIを保有することで申請に必要な力量を証明できる場合が多々あります。
この記事では、CBCIをはじめとしたBCP関連の資格について解説します。
BCP関連の資格制度の種類
BCP関連の資格制度を提供している機関のうち、国内で認可されている資格制度を扱っているのはBCI、IRCA、DRII、BCAO、RMCAです。この中で、国際的に認められている資格制度を提供しているのは、BCI、IRCA、DRIIの3つです。BCAO、RMCAが提供している資格制度は、国内のみで認められています。

BCI
BCI(The Business Continuity Institute)は、事業継続に関するさまざまな情報や教育を提供している機関です。1994年にイギリスで創設され、2025年2月現在、世界中で120を超える国に9,000人以上の会員がいます。
BCIでは下記の表のように、主に4つのレベルに分けた資格を認定していますが、BCIの認定資格試験で取得可能な資格はCBCIのみです。他の4つは、CBCIの取得後に、一定の基準を満たしていることを証明するなどして申請するという特徴があります。
【表】BCIで取得可能な資格
資格名 | 主な取得(申請)条件 |
---|---|
CBCI | 研修終了後にBCI認定資格試験を受験し、63問以上の正答があること |
【表】CBCI取得以降の資格レベル
資格レベル | 主な取得(申請)条件 |
---|---|
AMBCI | ①CBCI試験に合格している(※)こと、または同等の資格を有していること ②直近12か月の間に少なくとも20時間のCPD(継続的専門能力開発)活動を完了していること など |
MBCI | ①CBCI試験に合格していること、またはAMBCIの資格を有していること、またはBusiness Continuity Management BCI Diplomaを有していること ②直近12か月の間に少なくとも20時間のCPD活動を完了していること など ※下記2つの条件を満たすと、さらに上級の「Hon MBCI」の資格が得られる ①7年以上にわたって、BCI会員として著しく貢献していること ②10年にわたって業界への貢献が認められること |
FBCI | ①MBCIの資格を有していること ②直近12か月の間に少なくとも20時間のCPD活動があること など ※下記2つの条件を満たすと、さらに上級の「Hon FBCI」の称号が得られる ①10年以上にわたり、BCI会員として著しく貢献していること ②15年にわたり、業界への貢献が認められること |
※「CBCI試験に合格していること」と記載のある箇所については、すべて2008年以降に実施されているCBCIに合格していることが条件となっています。
※The Business Continuity Institute「Individual Membership」などをもとにニュートン・コンサルティングが作成
CBCIの試験
CBCIの試験は90問の多項選択式試験で、試験時間は90分です。試験はオンラインで実施されます。
CBCIの資格有効期間
CBCI認定証の資格有効期間は3年です。なお、CBCI試験に合格すると、CBCIの肩書や特典を1年間無料で使用することができますが、この肩書を3年間使い続けたい場合は、年会費の会員資格料を支払う必要があります。
IRCA
IRCA(International Register of Certificated Auditors)は、世界標準のマネジメントシステム審査員や監査員の評価、国際登録を行う機関です。1919年に英国で創設され、現在では世界に19,000人の登録メンバーを擁しています。
IRCAが提供する資格制度のうち、BCP関連に該当するのは「BCMS 事業継続マネジメントシステム審査員スキーム」です。本スキームに申請する際には、事業継続マネジメント原則の知識を持っていることを証明する必要がありますが、この証明としてCBCIの修了が認められています。
なお、IRCAに登録された審査員/監査員は、審査/監査の経験と学習の要件に基づいて、5つの登録グレードに分かれます。登録グレードは、Associate Auditor(准審査員/准監査員)、Internal Auditor(内部監査員)、Auditor(審査員)、Lead Auditor(主任審査員)、Principal Auditor (プリンシパル審査員)です。Associate Auditor(准審査員/准監査員)以外のグレードでは、登録申請の際に審査/監査の経験などが必要となります。その証拠としてCBCIの修了が認められているため、CQI and IRCA認定コースの受講前にCBCIを修了することをおすすめします。
IRCAの初回登録
事業継続マネジメントシステム(BCMS)におけるAssociate Auditor(准審査員/准監査員)の初回登録について解説します。
はじめて登録する場合は、CQI and IRCA認定のトレーニングコース「主任審査員コース」を受講して合格修了します。本コースは、CQI and IRCA認定トレーニングパートナー機関で受講することが可能です。合格後、認定機関から合格証を受領し、CPDログシートを作成します。合格修了証明書のコピーとともに申請フォームから提出後、年間登録費の支払いを完了すると登録カードと登録証が発行されます。
IRCAの資格有効期間
IRCAの資格の登録有効期間は5年間です。
DRII
DRII(Disaster Recovery Institute International)は、事業継続マネジメントの実務に携わる人のための教育と認定プログラムを提供している機関で、1988年に設立されました。現在、世界100か国を超える20,000人以上の資格者を有しています。
DRIIでは、事業継続の試験に合格後、認定申請と過去のBCPに関する経験が審査されます。試験は「プロフェッショナル・プラクティス」の専門業務10項目がベースになっているため、認定資格試験コースの受講をおすすめします。
- ▼プロフェッショナル・プラクティスとは
- BCMを開発、維持、監査するために設けられた知識体系で10項目の専門業務から成り立っています。専門用語とビジネス継続に関する情報や傾向、調査結果、分類のカテゴリー、適切な手法と非適切な手法の基準、特定の公式、基本的な概念・理論を網羅したものです。
- <専門業務の10項目>※赤字はコア業務
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- プロジェクトの導入とマネジメント
- リスク評価とコントロール
- ビジネス影響分析
- プロジェクトの導入開始とマネジメント
- 緊急対応とオペレーション
- ビジネス継続計画の開発と実施
- 啓発と研修プログラム
- ビジネス継続計画の演習と更新
- 危機広報
- 外部機関との調整
事業継続における資格認定は以下の4つです。
【表】DRIIの資格レベル一覧
資格レベル | 読み方 | 実務経験 | プロフェッショナル・プラクティス |
---|---|---|---|
ABCP | アソシエイト・ビジネス・コンティニュティ・プロフェッショナル | 2年以下 | なし |
CFCP | サーティファイド・ファンクショナル・コンティニュティ・プロフェッショナル | 2年以上 | 3項目(コア業務4項目のうち1項目は必須) |
CBCP | サーティファイド・ビジネス・コンティニュティ・プロフェッショナル | 2年以上 | 5項目(コア業務4項目のうち2項目は必須) |
MBCP | マスター・ビジネス・コンティニュティ・プロフェッショナル | 5年以上 | 7項目(コア業務4項目は全て必須) |
※一般社団法人 DRIジャパン「資格認定」をもとにニュートン・コンサルティングが作成
試験対策
DRIIの資格試験は、100問の多項選択式試験です。プロフェッショナル・プラクティスを網羅しており、国内外のBCPやBCM関連のガイドラインや書籍などの知識を有するだけでは合格することが難しい試験となっています。そのため、DRIIの日本語コースである「BCLJ 2000」や「BCP 501」を受講して試験対策を実施します。
DRIIの資格有効期間
DRIIの資格には毎年更新が必要であり、資格レベルにより更新料が異なります。なお、DRII認定を申請するにあたってはまず、資格試験に合格する必要がありますが、この試験のスコアの有効期限は3年間となっています。試験から3年以内に申請がなされなかった場合には、再受験する必要があります。
BCAO
BCAO(事業継続推進機構)は、BCP/BCMの普及啓発、研究および調査を目的として2006年に設立された民間の非営利団体です。事業継続にかかわる4つの資格を発行しています。
【表】BCAOの資格レベル
資格名 | 認定内容 | 受験資格 |
---|---|---|
BCAO認定 事業継続管理者 | 事業継続の基礎知識を取得し、事業継続とは何かを理解できる | ・誰でも受験可能 ・個人正会員、法人正会員、法人賛助会員、学生会員または資格会員であること(試験合格後の入会可。この点は全資格共通) |
BCAO認定 事業継続准主任管理士 | ・自社の事業継続を推進するための知識がある ・事業継続の担当者の役割を理解している |
・事業継続管理者を取得済であること ・個人正会員、法人正会員、法人賛助会員または学生会員であること |
BCAO認定 事業継続主任管理士 | ・自社で事業継続の推進の実務を担える ・事業継続計画・体制の維持管理ができる ・企業間(部門間)で事業継続に関して共通概念で相互に理解できる ・事業継続計画の策定・運用にあたり、必要に応じて事業継続コンサルタントと応対ができる |
・事業継続管理者を取得済であること ・個人正会員、法人正会員、法人賛助会員または学生会員であること |
BCAO認定 事業継続上級管理士 | ・BCを代表するBCの専門家 ・BCAOの推進するBCのあり方を提言する知見・力量を有する |
・BCAOの概ね5年以上の会員であること ・原則として事業継続主任管理士であること(同等以上の知見・力量で特例は認めるが、主任管理士テキストの監修者等のレベルを求める) など |
※特定非営利活動法人事業継続推進機「資格・試験」をもとにニュートン・コンサルティングが作成
資格試験の日程は、BCAOのサイトで公開されます。
RMCA
RMCA(日本リスクマネジャー&コンサルタント協会)は、1993年に設立されたリスクマネジメントに関する人材育成、指導、情報などを提供するNPO団体です。
BCPに関する資格は「RMCA BCPアドバイザー」のみです。RMCAのサイトよりBCPアドバイザーを受講したあとに、同サイトから試験を申し込み、合格することで認定資格を得ることができます。試験の出題範囲は、BCPアドバイザー講座の動画内で紹介されるため、比較的取得しやすい資格と言えます。
RMCA BCPアドバイザーの有効期間
認定資格は、資格試験合格後から3年間です。