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コラム

大規模停電に強い社会を目指して―北海道胆振東部地震のブラックアウトをふりかえる―

2019年03月04日

アソシエイトシニアコンサルタント

山田 真司

アソシエイトシニアコンサルタント 山田 真司

2018年は、大阪北部地震(6月18日)、西日本豪雨(7月)、北海道胆振東部地震(9月6日)、そして台風21号をはじめとする台風(日本への接近は15個、内5個が上陸)の発生など、災害大国日本を象徴する年でした。中でも、北海道胆振東部地震の発生は、現代の高度な都市機能が持つ脆弱性を浮き彫りにする災害でした。本稿では、この地震による被害の中で最も社会的インパクトが大きかった、北海道全域にわたる大規模な停電、いわゆる“ブラックアウト(Blackout)”を振り返ります。

北海道胆振東部地震とは

厚真町での大規模な土砂崩れの様子(最大震度7)

北海道胆振東部地震は、2018年9月6日(木)未明に胆振地方中東部を襲ったマグニチュード6.7を観測する強い地震です。厚真町では最大震度7を、その他の広い地域で震度6強、6弱を観測しました(【表1】参照)。

政府の公表資料(「平成30年北海道胆振東部地震に係る被害状況等について(2019年1月28日現在)」)によれば、この地震による人的・物的な被害は、死者42名、負傷者731名(内:重傷者31名)、全壊した住宅462棟にもおよびました。また、北海道内44の市町村で一時68,249戸にて断水が発生。完全復旧までに1か月を要しました。

 

表1 :各地の震度
震度 地域
震度7 厚真町
震度6強 安平町、むかわ町
震度6弱 札幌市東区、千歳市、日高町、平取町
震度5強 札幌市清田区、白石区、手稲区、北区、苫小牧市、江別市、三笠市、恵庭市、長沼町、新ひだか町、新冠町
震度5弱 札幌市厚別区、豊平区、西区、函館市、室蘭市、岩見沢市、登別市、伊達市、北広島市、石狩市、新篠津村、南幌町、由仁町、栗山町、白老町

 

ブラックアウトの発生

ブラックアウトは、全系崩壊とも呼ばれ、電力会社が送電する範囲の全域または広域にわたって停電している状態を意味します。今回の事例では、北海道全域が停電しているため、ブラックアウトに該当します。北海道胆振東部地震でのブラックアウトは、日本で唯一の発生事例です。

先ほど述べました68,249戸にもおよぶ断水も、そのほとんどが水道施設の停電によるものです。水道管の破裂による断水は、震度6弱以上を観測した地域を中心にわずか1市7町(札幌市、厚真町、浦臼町、雨竜町、平取町、むかわ町、日高町、安平町)に過ぎませんでした。また、ブラックアウトの影響によってNHKや民放5社を含む地上波(テレビ)の停波、病院での透析の中断、道内空港の欠航便の発生、油槽所の機能停止も発生しています。

今回の地震でブラックアウトが起きたのは、地震発生(午前3時7分)からわずか18分後の3時25分のことでした。何故、わずか20分足らずの間に北海道全域にわたる停電が発生したのでしょうか。

ブラックアウトの原因

ブラックアウトの原因をお話する前に、そもそも停電が発生する原因についてお話します。まず挙げられるのが、送電線の断絶です。例えば、地震の揺れにより電柱が倒れてしまえば、送電線は断絶します。地震以外にも、積雪による送電線のたるみ・接触、強風による飛翔物(例えばトタン屋根等)の接触による断絶も考えられます。また、発電機そのものが故障することも原因となります。

別の原因として、供給(発電量)と需要(消費量)の不均衡があります。発電量と消費量とは常に一致している必要があるため、発電量が消費量よりも多い場合は、発電量を抑制します。具体的には、発電機の出力低下や機能停止を行います。

反対に消費量が発電量よりも多い場合は、消費量を抑制するため、(東日本大震災の際に実施した計画停電のように)強制的な停電措置を行います。いずれの場合も、停電を引き起こす原因となります。

表2:停電の原因
原因 状況
送電線の断絶 地震の揺れにより電柱倒壊、積雪や強風による接触
発電機の故障 地震の揺れによる故障、水没
発電機の出力低下や機能停止 発電量が消費量よりも多い場合の是正措置
強制的な停電措置 消費量が発電量よりも多い場合の是正措置

 

ブラックアウトは、上記【表2】の停電原因が複合的に絡みあうことで発生します。実際、北海道胆振東部地震のブラックアウトは、複数の発電所が機能停止したことが主な原因となって発生しました(【表3】参照)。

 

表3:各発電所の機能停止
機能停止 原因
苫東厚真火力発電所(2号機、4号機) 地震の揺れにより発電所内の機器破損による機能停止
水力発電所 道東地域と北見地域で発生した送電線の断絶。断絶に伴う需要量過剰を原因とする周波数乱れによる機能停止
苫東厚真火力発電所(1号機) 2号機、4号機の停止に伴う需要量過剰を原因とする周波数乱れによる機能停止

出典:資源エネルギー庁「⽇本初の“ブラックアウト”、その時⼀体何が起きたのか」を基にニュートン・コンサルティングが作成

日本では北海道胆振東部地震でのブラックアウトが唯一の事例ですが、海外でブラックアウトが発生した事例はいくつか見つけることができます。日本と同様に高度な電力設備を持つ国の事例としては、2003年8月に発生した北アメリカ大停電(ニューヨーク大停電、ニューヨーク・カナダ大停電)が挙げられます。

2003年8月14日、オハイオ州、ミシガン州、ペンシルバニア州、ニューヨーク州、コネティカット州、ニュージャージー州等アメリカ北東部・中西部に位置する各州に加え、カナダのオンタリオ州にまたがる広い範囲で停電が発生しました。この停電により、5,000万人以上が停電の影響を受け、経済被害は40億~60億ドルにも及びました。

この大停電は、オハイオ州で発生した送電線と樹木の接触による遮断を契機に、電力系統内での周波数変動が生じ、系統内の各州発電所が次々と機能停止に陥ったことで発生しました。高度でありながら複雑なシステムである電力インフラの脆弱性を物語る事例です。
 

ブラックアウトの検証結果

今回の北海道胆振東部地震でのブラックアウトを受け、電力広域的運営推進機構は、経済産業省や資源エネルギー庁、電気事業連合会、北海道電力からのオブザーブの下、「平成30年北海道胆振東部地震に伴う大規模停電に関する検証委員会最終報告」を作成・発表しました。

本文だけで132ページにも及ぶ報告書には、ブラックアウト発生から回復(北海道内で必要とされる供給力約320万kWの確保)を果たす9月7日夕方までの復旧活動の全容、復旧活動(および手順)の妥当性に関する検証結果、今後のブラックアウト発生に対する再発防止策が記載されています。より詳細な、特に技術的な面については同報告書を参照いただくとして、今回は復旧活動(および手順)の妥当性に関する検証結果についてご紹介します。

検証結果の総評としては、今回の復旧活動は概ね妥当であったとされています。例えば、復旧に要した時間について過去に発生した他の大規模停電と比較した場合、もちろん停電規模に差異があることを前提としても、他事例に対して遜色はありませんでした。(【表2】参照)。停電の規模を踏まえると、100万kWあたりの復旧に要した時間はむしろ早い方ではないでしょうか。

表2:復旧事例との比較
事例 停電規模 停電時間 100万kWあたりの復旧に要した時間
南オーストラリア州 約190万kW 約26時間 13時間
北海道 約310万kW 約45時間 15時間
ハワイ(オアフ島) 不明(標準需要120万kW) 約19時間 16時間

※出典:電力広域的運営推進機構の報告書を基にニュートン・コンサルティングが作成

また、復旧活動として行った手順に関しても概ね妥当との評価がなされています。一部失敗した復旧活動もあったとのことですが、仮に全ての工程で失敗が無かったとしても、復旧に要する時間は数時間程度しか短縮しないとのことです。もし万が一、国内のいずれかの地域で今回と同程度の規模のブラックアウトが発生した場合、復旧に要する時間は概ね同じもの(2日程度)であると推測されます。

大規模停電に強い社会を目指して

では、ブラックアウトに対して、企業は、そして地域(自治体)はどのような対策ができるでしょうか。

今回の北海道胆振東部地震におけるブラックアウト発生を受け、9月21日、政府は「重要インフラの緊急点検に関する関係閣僚会議」を開催し、全ての重要インフラに対する緊急点検を指示しました。この緊急点検の中で、今後日本の各地域でブラックアウトが発生する可能性について検討されました。検討結果は、資源エネルギー庁内に設置された「電力レジリエンスワーキンググループ」が作成した「電力レジリエンスワーキンググループ―中間取りまとめ―」の中で詳しく掲載されています。

検討の結果、東日本エリア、西日本エリア、沖縄エリアのいずれの地域も、最大電源サイト(東日本エリア:富津火力発電所、西日本:川越火力発電所、沖縄エリア:金武火力発電所)が機能不全に陥る状況になっても、電力会社が十分な予防策(例えば、災害に強い再生可能エネルギーの導入促進や火力発電設備の耐震性確保の技術基準への明確な規定化)を実施している場合、「ブラックアウトには至らない」ことが確認されました。

しかしながら、自然災害では“想定外”がつきものです。絶対に大丈夫ということはありません。そのため、電力を供給する側(電力会社)はもちろんのこと、需要する側(一般企業、一般家庭等)にもブラックアウトが発生した際を想定した対策が求められます。

電力を供給する側に求められる対策としては、

  1. 国民への迅速かつ正確な情報発信体制の構築
  2. 電力会社間および電力会社と関係機関間の連携強化(【図1-1,1-2】参照)

が挙げられました。

図1-1:電力会社が取り組む連携強化

図1-2:電力会社が取り組む連携強化

出典:電力レジリエンスワーキンググループ「電力レジリエンスワーキンググループ―中間取りまとめ―(2018年11月27日)」

一方、需要する側(一般企業、一般家庭等)に求められる対策としては、

  1. 「デマンド・レスポンス(Demand Response)」(電力需要のピーク時間帯に皆で一斉に節電することにより、ピーク需要を抑える取り組み)の促進
  2. スマートメーターを活用した緊急時の効率的な節電の実現
  3. コージェネレーション(熱電併給)を含む自家発の適切な活用
  4. 蓄電機能としてのEV(電気自動車)や水素燃料電池の活用

が挙げられています。

このような“電力の抑制と多様化”は、すぐにできるものではありません。多大な投資を必要とし、かつそれを需要者側も負担することを受容する必要があります。当然、国からの支援(税制優遇や金銭的支援)も必要になるでしょう。

電力に対する日本のレジリエンスを高めるためには、供給側たる電力会社に加え、需要者たる企業や家庭も、そして国(政府)も一致団結して臨まなければなりません。今回の北海道の教訓が活かされ、災害に強くレジリエントな日本の電力供給が実現することを願ってやみません。

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