UPS (Uninterruptible Power Systems/Supply; 無停電電源装置)

UPS(Uninterruptible Power Systems/Supply; 無停電電源装置)は、停電をはじめとする様々な電源トラブルが発生した際に、電源を供給する機器(負荷機器)に対して一定時間電力を供給し続けることで、パソコン、サーバーなどのコンピュータ機器やネットワーク機器を守るための電源システムです。
UPSとは
諸外国に比べ日本の電力事情は非常に安定していますが、それでも、自然災害や電気関係工事等の影響で、停電以外に、瞬断(電源が一瞬途切れること)、過/低電圧、サグ/サージ(異常に高い電圧が瞬間的に発生すること)、電圧波形ひずみ、高周波ノイズ等の電源トラブルが発生することがあります。UPSを利用することにより、これらの電源トラブルを低減・防止することができます。
UPSの構造
UPSは、一般的に蓄電部と電力変換部から構成されており、停電が発生したときには蓄電部から電力が供給され、停電以外の電源トラブルが発生した場合は、電力変換部の機能により機器を守ります。蓄電部は主にバッテリーであり、電力変換部は主に整流器(交流電力を直流電力に変換する装置)とインバータ(直流電力を交流電力に変換する装置)から構成されます。
UPSの種類
UPSは、給電方式の違いにより「常時インバータ給電方式UPS」、「常時商用給電方式UPS」、「ラインインタラクティブ方式」の3種類に大別されます。
常時インバータ給電方式は、商用電力の状態に関わらず、常に整流器とインバータを通して給電することにより、波形の安定した交流電力を出力します。この方式では、商用電力に生じる電源トラブルが直接機器に伝わることはなく、停電発生時の運転切り替えタイムラグもありません。バッテリーの増設によりバックアップ時間を延長することも可能です。主に中規模以上のUPSに用いられる方式で、高い電源品質の維持が要求されるシステムでの適用が想定されます。あり、価格も高価になります。
常時商用給電方式は、通常時には商用電力をそのまま機器に直接接続します。停電が発生した場合には、出力が商用電力からインバータ側に切り替えられ、バッテリーに蓄電されていた電力がインバータにより直流から交流に変換されて、接続機器に電力が供給されます。停電が発生しない限りインバータを運転しないため省エネルギーな方式で、常時インバータ給電方式UPSと比較すると、コストを抑えたUPSといえます。ただし、瞬電(電源が一瞬途切れること)などが発生した際のインバータへの切り替えタイムラグが約10msec程度あるため、使用する場合は、接続機器が対応しているかどうか注意を払う必要があります。一般的には、個人用パソコンなど瞬電が許されるシステムへの適用が想定されます。通常時はインバータがスタンバイ状態にあるため、SPS (Standby Power System)とも呼ばれます。
ラインインタラクティブ方式は、通常時は商用電力から給電し、停電などが発生した際は蓄電池からインバータを通じて給電します。電圧変動があった場合は、一定の範囲内で簡易的な電圧調整を行うことが可能です。そのため、「常時商用給電方式」と比べて、入力電圧の変動により受ける影響がやや小さくなります。機内の電圧変動がある環境や、個人利用のパソコンなどでの適用が想定されています。
UPSと発電機
UPSは、瞬時に起きる電源異常に対して素早く対応できるという点で大きなメリットを持つものですが、バックアップ時間は5分~30分ほどにとどまるというデメリットがあります。したがって、長時間の停電に備えるためにはUPSと発電機(起動は遅いものの、一度起動されると長時間の稼働が可能な装置)を組み合わせる必要があります。なお、この組み合わせには相性があり、発電機を導入する際には、サーバーのサプライヤーもしくはUPSメーカーのアドバイスに従った方がよいでしょう。発電機は高価であり、小規模データセンターでも億単位のコストがかかることがあります。
UPSのメンテナンス
UPSは、定期的な点検・保守を行うことにより、その機能を発揮・保持することができます。UPSにはバッテリーの寿命があり、例えば小型UPSでは、短いもので1~3年、長いもので2~5年が期待寿命だとされているため、この使用期限を超える前にバッテリー交換を行う必要があります。そのほかにも、ファンなどの消耗部品は3年をめどに交換することが望ましく、ユーザーはメンテナンスに伴う諸費用も見込んでおく必要があります。