2025年10月1日~10月3日の3日間、東京ビッグサイトにて、国内最大級の危機管理
総合トレードショー「危機管理産業展(RISCON TOKYO)」が開催されました。
本展示会は、「防災・減災」、「BCP・事業リスク対策」、「セキュリティ」の3分野を主要テーマとし、防災関連のツールや監視・警戒システムなど、様々な製品・サービスが集まるイベントです。
当社は、展示エリアにてAIを活用したBCP訓練ツール「dan-lo」をメインとしたブースの出展と、セミナー&カンファレンスエリアにてエグゼクティブコンサルタント/dan-lo事業部長の久野 陽一郎が講演を行いました。
本記事では、「予測不能な未来へのBCP~企業のレジリエンスを向上させるには」と題し、多様化するリスク環境におけるBCPの在り方について解説した久野の講演概要をお伝えします。
1. はじめに:予測不能な時代におけるBCPの再定義
近年、多様な危機が頻発し、戦争や自然災害などの危機が“例外”ではなく“前提”と言える時代になっています。日本企業も自然災害だけでなく、地政学リスクやサプライチェーンリスク、コンプライアンスリスクなど様々なリスクに直面しています。加えて、平時と有事の境界が曖昧になり、企業のBCP(事業継続計画)も再定義が必要となっています。
こうした中で課題となるのは、「自社のBCPは危機時に本当に機能するのか」という点だと指摘しました。
2. 企業のレジリエンスを高める3つの要点
では、企業はどのような準備・対応をすればよいのか、BCPはどうあるべきか、要点を次のように説明しました。
オールハザード型BCPへの移行
前述のように企業の直面するリスクが多様化、頻繁化する中では、事象ごとに計画を策定したり対応策を考えたりするのでは際限がありません。つまり、汎用的なBCPの仕組み=オールハザード型のBCPが推奨されるのだと述べました。
BCPは初動対応計画(ERP/CMP)と事業継続計画(BCP/BRP)の二層構造になっていて、オールハザード型も同様です。初動対応は対策本部の体制と役割、社内外のコミュニケーションなど事象共通の枠組みでまとめ、その上で事象特有のアクションを事象別のチェックリストなどに取り纏めます 。事業継続計画は、重要な事業を構成する経営資源別(人員、施設、IT、サプライチェーンなど)に対策を検討します。これにより、人員の半減、システム停止など資源の被害状況を起点に対応策を導き出すことができます。
グローバル化と地政学リスクへの対応
不確実性が高まる時代において、地政学リスクへの懸念も高まっています。日本は他国から直接的な武力攻撃を受ける可能性は低いと考えられているものの、サプライチェーンの観点では大きな影響が発生する可能性があるためです。
企業は、海外駐在員や現地スタッフ、およびその家族の人命保護や避難判断の明確化や、代替となる調達・生産ルートの確保といった対策が求められています。
実際の企業における事例として、製造業A社のBCPを取り上げました。同社はアジアに複数の拠点を有しグローバルに製品を供給しています。BCPについては以下のような対策を取り入れています。
- アジア3拠点でのサプライチェーンBCP(代替生産)構築
- 主原料の代替調達、シングルソースの原料在庫の積み増しを決定
- 現行製品の製造出荷が不可となった場合に、開発中の次世代製品を活用できるか顧客承認を申請
こうした平時からの備えが、地政学リスクをはじめとする外部環境の変化に対して、サプライチェーンの強靭性を確保する要となると説明しました。
目的別・多様な訓練シナリオによる応用力の獲得
続いて、BCPを真に機能させるために必要な「実効性」について説明しました。BCPの実効性を高めるには、訓練の目的を明確にし、グループ会社や海外拠点を含む多様な組織を対象に、様々なシナリオを想定した継続的な訓練が重要だと強調しました。
お客様の支援を行う中では「訓練がマンネリ化している」、「訓練へのモチベーションが低下している」といった相談が多いと言います。
そのため、訓練のシナリオについては、地震・風水害といった突発的な災害だけでなく、サイバー攻撃・テロ・政情不安・内部不正・人権侵害など、幅広いリスクを想定することが大切です。これらを繰り返し行うことで段階的にレベルアップさせていくことが推奨されます。
いずれにおいても、“全知全能“的なすべての事象に完璧に対応できるBCPはないという前提を踏まえ、見直し・改善を重ねていくことが不可欠です。
3. まとめ:実効力あるBCPでレジリエンスを強化
予測不能な時代では、BCP運用や訓練の実施は「特別な活動」ではなく「日常的に取り組む活動」へとシフトしていかなければなりません。BCPのゴールは、組織が目標達成のために邁進できる状態を確保することです。
これを達成するには、ここまでに挙げたような訓練の実施や継続的な改善によってBCPの実効性を高めることが重要であることを改めて強調しました。危機が発生した際に自然に動ける状態を作ることが、組織のレジリエンスを強化する鍵となります。
4. 補足:出展したブースの様子
展示エリアでは、300を超える出展者がRISCONのテーマに関連する技術やシステムを展示しました。当社のブースでは、当社の開発したAIを活用したBCP訓練ツール「dan-lo」を紹介しました。

前述の久野の講演では、訓練シナリオの多様性と訓練の実施頻度を向上されることを訴求しましたが、本ツールを利用すると様々なシナリオの提案から訓練結果の評価までを自動で行うことができます。モニターにてデモンストレーション動画を放映しながら、コンサルタントによる機能説明も実施し、多くの方にご興味をお持ちいただくことができました。