営業秘密の不正取得などが該当する「営業秘密侵害事犯」などの2023年の検挙状況をとりまとめた「令和5年における生活経済事犯の検挙状況等について」を警察庁が4月11日、公表しました。営業秘密侵害事犯は検挙事件数、相談受理件数ともに近年、増加傾向にあります。2023年に警察が摘発した営業秘密侵害事件は26件で、統計をとり始めた2013年以降で2番目に多くなりました。警察への相談も78件となり過去最多となりました。さらに、法人も検挙されており、2023年の検挙数は2件でした。
営業秘密侵害事犯は不正競争防止法第21条第1項および第3項に該当する事犯であり、営業秘密を不正に取得する行為や、正当に示された営業秘密を任務に背いて領得、使用および開示する行為などが該当します。
警察庁のとりまとめによると、転職・独立の際に営業秘密に関する情報を持ち出す事犯がありました。例えば、転職後に営業秘密である取引台帳などのファイルデータを不正取得する事件が発生、不正競争防止法違反で検挙しました。また、在職中に発生した事件としては、勤務先の営業秘密である患者情報などを領得したとする事件がありました。営業秘密侵害事犯の増加には、企業の営業秘密への意識の高まりや社会情勢の変化に伴う人材の流動化などが背景にあると説明されています。また、大手企業が関係する事犯や営業秘密が海外に流出した可能性がある事犯も発生していると記されています。
なお、営業秘密侵害事犯は知的財産権侵害事犯の一つです。公表された資料には、商標権侵害事犯や著作権侵害事犯のほか、生活経済事犯の一つである特定商取引等事犯などの検挙数および相談受理数などがまとめられています。2023年の生活経済事犯の検挙事件数としては、前年比2.2%減の8,598事件となり過去10年間で見るとおおむね横ばいとなりました。