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用語集

VRIO分析

2019年10月29日

VRIO分析とは、企業が持つ経営資源の独自の強みや弱みを分析するフレームワークのことです。アメリカの経営学者であるジェイ・B・バーニーによって発案され、経営戦略策定などに使用されています。

分析は4つの視点から行いますが、その4つの視点である経済的価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣可能性(Imitability)、組織(Organization)の頭文字をとってVRIO分析と呼称されています。

リスクマネジメントの国際規格ISO31000:2018では、リスクを「目的に対する不確かさの影響」と定義しています。自社の思いだけではなく、「不確か」である市場や外部要因を加味しながら自社の経営資源を分析することにより、客観的に価値のある経営資源を明らかにすることができ、資金や資源の投入を削減すべき対象を明確にすることができます。リスクマネジメントの実践において自社を取り巻く環境の理解は必要不可欠であり、その意味でVRIO分析の活用は有用と言えるでしょう。

本稿ではVRIO分析の具体的な実施方法や留意点などを紹介していきます。

VRIO分析の4つの視点

VRIO分析に使用するのは次の4つの視点です。

  1. 経済的価値(Value):その経営資源を保有していなかった場合と比較して企業の売り上げが増大するか
  2. 希少性(Rarity):その経営資源は業界で希少性を有しているか
  3. 模倣可能性(Imitability): その経営資源を保有していない企業は、その経営資源を獲得、あるいは開発する際にコスト上の不利に直面するか
  4. 組織(Organization):その経営資源を活用するために、組織的な方針や手続きが整っているか(組織に根付いておらず、一部の人しか使用できない経営資源になっていないか)

これらの4つの視点に自社の経営資源が当てはまるかどうかをYESかNOかで分析します。4つ全てにYESがついた経営資源は持続的であり、競争優位性を有すると言えます。
 

【表1:VRIO分析イメージ(一覧表型)】
経済的価値(Value) 希少性(Rarity) 模倣可能性(Imitability) 組織
(Organization)
競争優位の状態
 
NO       競争劣位
YES NO     競争均衡
YES YES NO   一時的な競争優位
YES YES YES NO 持続的な競争優位
YES YES YES YES 経営資源の最大活用

VRIO分析の実施方法

VRIO分析にあたっては、まず自社の経営資源の洗い出しが重要になりますが、その方法としてバリューチェーンの把握を行います。そこから経営資源を洗い出し、それらの経営資源をV→R→I→Oの順番で分析していくという手順になります。

分析の実施方法には一覧表型(表1参照)とフローチャート型の2種類があります。一覧表型では、各経営資源に対してVRIOをすべてYES/NOで評価します。規模の大きい戦略や施策を構築する場合には一覧表型が有用ですが、一つの経営資源を分析するのに多くの手間を費やしてしまいます。一方フローチャート型では、NOが出た時点でその経営資源の分析をそこでストップします。そのため、多くの経営資源を分析したい時に有用です。

SWOT分析との比較から見るVRIO分析の特徴

VRIO分析のように自社の置かれた状況を分析するフレームワークとしては、他にSWOT分析などがあります。ここでは、SWOT分析とVRIO分析を比較することで、どの場面においてVRIO分析が有用かを見てみましょう。

SWOT分析は、目標達成を阻害する要因を明らかにし、戦略決定やマーケティングの意思決定を行う判断材料とするのに有用です。法律やトレンドなどの自社をとりまく外部環境とブランド力や資源などの自社の内部環境をプラス面、マイナス面に分けて「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の四象限から分析します。自社の経営資源が目標達成に有益かという観点から分析するのが特徴です。一方、VRIO分析は自社の経営資源を競合他社の持つ経営資源と比較した際の優位性を分析する際に有用です。

【図1:SWOT分析の四象限】

VRIO分析の具体例

では、具体例を用いてVRIO分析をやってみます。ここではニュートン飲料という架空の企業を想定して実施します。

【ニュートン飲料基本情報】

  • 事業概要:清涼飲料水の製造、販売
  • 拠点:本社、工場2拠点
  • 従業員数:5,000人
  • 主要顧客:首都圏の主要スーパー5社、コンビニ各社
  • 主要設備:製造ライン
  • 特徴:
    昨年開発した商品が大ヒット。その製品開発に係る生産技術は特許も取得している
    社長の経営手腕は有名で、様々なメディアでも取り上げられている
バリューチェーン 経営資源 経営資源の強み V R I O 競争優位の状態
仕入/購買 原材料 仕入れ先との関係は良好 YES NO NO NO 競争劣位
製造 製造ライン 高い技術力
製造方法は特許も取得
YES YES YES YES 持続的な競争優位
広報 広告戦略(社長) 社長が自ら広告塔となり様々なメディアで取り上げられる YES YES YES YES 持続的な競争優位
営業 営業従業員 卸先に頻繁に足を運び、良好な関係を構築 YES NO NO NO 競争劣位

この分析の結果、特許を取得している製造ラインと広告戦略(社長)がニュートン飲料では最も競争優位な経営資源ということになり、分析結果を活かした事業戦略例としては次のようなものが考えられます。

  • 製造ラインからの収益と事業拡大:製造ラインは特許も取得していることから、ライセンス収益としての財源となりますし、また、そうした製造ラインについて積極的に情報発信することで対外的な技術力のアピールとなり、新たな市場開拓も期待できます
  • 社長を広告塔としたメディア戦略の継続:ニュートン飲料では、社長自身が価値のある経営資源となっており、唯一無二の存在です。社長を効果的にメディアに露出させることが最大の自社アピールにつながります。

VRIO分析の留意点

以上見てきたように、VRIO分析は自社の経営資源を分析するのに有用なフレームワークですが、次の2点に留意する必要があります。

  1.  分析の結果競争優位な状態と判断された経営資源が、永続的に優位であるとは限らない
    顧客の価値基準も変化します。めまぐるしく外部環境が変化している昨今においては、顧客の価値基準が変わらず一定であるということはありません。そのため、時代の潮流に合わせた判断が必要です。
     
  2. 比較対象とする他社を想定する際は、ターゲットが類似している企業を選定する
    同業であっても、全くターゲットが異なる場合は比較対象とすることはできません。誤った比較対象を選定してしまうと、投資や注力するべき方向を見誤る可能性があります。

以上の点に留意しながら分析を行うことで、自社の経営資源の強み、弱みを適切に見極めることができるでしょう。

(執筆:玉川 朝恵

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