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応急危険度判定

掲載:2023年05月12日

用語集

大地震の直後に被災した建物を調べ、その後に続く余震によって倒壊したり、窓ガラスや屋根瓦が落下したりなどの危険がないか、被災建築物の安全性を応急的に判定することを「応急危険度判定」といいます。行政職員や自治体に登録された建築技術者の「応急危険度判定士」が実施し、危険・要注意・調査済の判定ステッカーを建物に貼って注意を促します。住民や通行人が危険な建物を避けることにより、二次災害を防止するのが目的です。

本震による倒壊を免れた建物でも、余震が続けば耐えられず、速やかな避難が必要なほど損壊していることもあります。人命にかかわる被害を拡大させないために大地震発生後、なるべく迅速に実施されるのが応急危険度判定です。緊急時、暫定的に実施される判定であって、法的な根拠はなく、被災者が公的支援を受ける「罹災証明」発行のための「住家被害認定調査」とは異なります。

応急危険度判定は全国統一基準の調査表を用いて、基本的に建物外部から目視で調査し、判定します。判定ステッカーは危険(赤)、要注意(黄)、調査済(緑)に色分けされており、家屋の玄関など人目に付きやすい場所に掲示して注意喚起します。また、応急危険度判定によって建物の安全が確認された場合、住民は早期に自宅へ戻ることができます。首都圏などが大規模災害に襲われると避難所が足りなくなることが予想されているため、避難者の数を抑える役割もあります。

地震の被害が甚大な場合、行政職員では対応しきれないため、都道府県知事が認定登録した応急危険度判定士がボランティアとして協力しています。建築士等の有資格者が講習会を受講して認定されており、2人1組で調査を行います。応急危険度判定士と書かれた腕章およびヘルメットを着用し、登録証も携帯しています。

日本で本格的に応急危険度判定が実施されるようになったのは、1995年の阪神 ・淡路大震災からです。米国では1985年のメキシコ地震をきっかけに応急危険度判定の開発がスタートし、1989年に被災度判定マニュアル「ATC-20」が作成され、その後の地震に使われています。ヨーロッパには応急危険度判定とは異なるものの、被災度区分の定義と例を示した「EMS-98」があります。

応急危険度判定は地震後に実施されますが、過去には豪雨や台風の被害に見舞われた地域で、判定ステッカーに似せた紙が住宅などに貼られて混乱したことがあります。倒壊の危険をあおり、解体・補修工事の依頼を促す内容で、悪質なリフォーム会社などの被害にあってしまうこともあるので注意が必要です。

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