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ISO (International Organization for Standardization 国際標準化機構)

掲載:2016年08月29日

改訂:2022年08月01日

執筆者:エグゼクティブコンサルタント 坂口 貴紀

改訂者:ニュートン・コンサルティング 編集部

用語集

ISO(International Organization for Standardization=国際標準化機構)は、国際規格を策定するための非政府系独立組織です。なお、ここで「国際規格」とはISO規格とも呼ばれ、品質や安全性、生産性の向上を図ることを狙いとして、モノやサービス、仕組みなどにおいて、組織が満たすべき共通の考え方やルールを定めた標準を指します。様々な分野で標準化を進めるISOですが、現在164カ国が加盟しており、スイスのジュネーブに活動の本部をおいています。

ISOは、これまでに22,500を超える数のISO規格を発行してきました。その範囲は、世の中の技術とビジネスのほぼすべてに及びます。繊維にはじまり、プラスチック、ゴムなどの材料や、自転車、航空機、果ては経営の仕組みにいたるまで、さまざまな分野で標準化が進んでいます。

ちなみに、ISO規格は、JSA(日本規格協会)が運営するJSA Web Storeにて入手が可能となっています。
※2019年8月末現在

         

国際(ISO)規格 vs. 国家規格

国際規格と良く比較されるものとして、国家規格があります。両者は何が違うのでしょうか。

1つには、効力の影響範囲が異なります。国際規格は164の加盟国(ほぼグローバルと言い切っていいと思います)において共通の考え方やルールを定めたものです。これに対し、国家規格は特定の国の中だけでの標準を定めたものということになります。

【参考:多くの国家規格は、実は国際規格と中身が同じ!?】
1995年に採択された協定により、ISO規格と類似の分野をカバーした国家規格を発行済みの国は、発行済みの国家規格を国際規格へ整合化するよう義務化されました。したがって、国家規格・国際規格・・・それぞれでカバー範囲が異なると言いながらも、実質的には国家規格を採用した時点で、国際規格を採用したことと同じ意味を持つ場合が少なくありません。たとえば、品質マネジメントシステムの国家規格JIS Q 9001:2015と国際規格ISO9001:2015の中身は同じです。

2つには、規格の呼び名が異なります。国際規格には、その発行組織であるISOが名称の冠としてつけられます。たとえば、ISO5(写真及びグラフィック技術)、ISO68(ISO一般用ねじ-基準山形)といったようにです。一方、国家規格にはその国固有の冠がつけられます。たとえば、イギリスでは英国規格(British Standard)の略称であるBSが冠になります。したがってBS7799(情報セキュリティ管理実施基準)やBS5709(品質システム)のような表記になります。日本では日本工業規格(Japan Industrial Standards)の略称であるJISが冠になります。あの有名なプライバイシーマークでは、採用している規格にJIS Q 15001という名称がつけられています。ちなみに、JISと番号の間にアルファベット(Q)がついていますが、これは規格の分野を表しています。Qは管理システムです。この他にもたとえば、Aは土木及び建築、Dは自動車、Tは医療安全用具といった形で表記ルールが決まっています。

ISO規格はどのように発行されるのか?

ISO規格の作成にあたっては、加盟国全てが関与するわけではありません。規格化を積極的に推進したいメンバーからなる作業グループによって進められます。なお、作業グループは、参加メンバーの数や期待される役割に合わせて、呼び名が異なります。具体的には、専門委員会(TC)、分科委員会(SC)、作業グループ部会(WG)があります。

ISO規格は、主に6つの段階を経て発行されます(下表参照のこと)。次の段階に進むためには、各段階で、特定のメンバーからの投票で一定数を超える賛成を得る必要があります。こうした理由から、規格化提案から発行までに時間がかかることも多いため、規格策定に着手してから発行にいたるまでに36ヶ月という期限が設けられています。

ところで、ISO規格ははじめからISO規格と呼ばれているわけではなく、策定段階では異なる呼称がつけられます。最終段階6を無事に終えてISOを冠につけた正式名称で呼ばれるようになります。その手前の段階は、いわゆるドラフト段階であるため、規格は、下表に示したようにCDやDISなど、その段階に応じた名称で呼ばれることになります。たとえば、ISO22301は、2012年に正式発行された事業継続マネジメントシステムの国際規格ですが、2011年8月の時点ではまだ4番目のプロセスであり、この際には、DIS22301と呼ばれていました。

【表:ISO規格の提案~発行までのプロセス】
  段階 プロセス 企画案名称 投票 期限
1. 提案段階 ★ 国や関連団体による規格化提案 NWIP(新作業項目提案) 3ヶ月投票 6ヶ月
2. 準備段階 作業原案の提案 WD(作業原案)   12ヶ月
3. 委員会段階 委員会原案作成 CD(委員会原案)   24ヶ月
4. 照会段階 ★ 国際規格原案の照会と策定 DIS(国際規格原案) 3ヶ月投票 33ヶ月内
5. 承認段階 最終国際規格案承認 FDIS(最終国際規格案) 2ヶ月投票  
6. 発行段階 ★ 国際規格発行 IS(国際規格)   36ヶ月
※★=義務付けられている段階
参考URL:http://www.iso.org/iso/home.html

参考までに、品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9001:2008がどのようなスケジュール間でどのような段階を経て、2015年版の正式発行にいたったのか以下に示しておきます。

【表:ISO9001:2015が発行にいたるまでのプロセスとスケジュールの実際】
プロセス
2011
2012
10
3
ISO9001:2008のシステマチックレビュー
2012 3-5 WG24設置、NWIP発行
2012 6-10 WG第1回会合、NWIP投票。賛成46 対 反対10(棄権8)
2012 11 WG第2回会合、WD作成
2013 3 WG第3回会合、WD2発行
2013 6-9 CD投票。賛成51 対 反対11(棄権3)
2013 11 WG第4回会合
2014 3 WG第5回会合、DIS作成
2014 5 DIS発行
2014 7-10 DIS投票。賛成64 対 反対8(棄権1)
2014 11 WG第6回会合、FDIS作成
2015 2 WG第7回会合、FDIS作成(継続)
2015 7-9 FDIS投票(賛成75、反対0)
2015 9 IS発行
引用:日本規格協会 ISOマネジメントシステム「ISO9000ファミリー規格開発情報」

ひとたび発行されると規格は永久にそのままか?

ISO規格は原則、5年に1回の頻度で見直されます。「規格の必要性は継続しているか」、「必要性が継続している場合は現状維持か改訂する必要があるか」、といった観点で確認が行われ、必要があれば改訂します。例えば、品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9001や環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001では、これまでに、以下のようなスパンで改訂が行われてきました。

【表1. ISO9001及びISO14001の改訂の歴史】
発行・改訂年 ISO9001 ISO14001
1987年 初版発行  
1994年 改訂  
1996年   初版発行
2000年 改訂  
2004年   改訂
2008年 改訂  
2015年 改訂 改訂

ISOマネジメントシステム

ISO規格の中でも、“管理の仕組み”に関して標準化した規格を、ISOマネジメントシステムと呼びます。ISOマネジメントシステムは、“継続的改善”・・・すなわち、PDCA(Plan-Do-Check-Act)の仕組みの導入を図ることを通じて、その組織の目的達成を促進することを狙いとした規格です。PDCAは、目的に基づき、目標及び達成計画を策定し(Plan)、これを実行し(Do)、実行状況や結果を監視・測定・分析・評価し(Check)、改善できる点があれば改善する(Act)という活動です。

ISOマネジメントシステムの代表格は、既に何度か例として取り上げたISO9001(品質マネジメントシステム)です。この他にも、ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)、ISO20000(ITサービスマネジメントシステム)など、数多くの国際規格が発行されています。

  • ISO9001 品質マネジメントシステム
  • ISO14001 環境マネジメントシステム
  • ISO27001 情報セキュリティマネジメントシステム
  • ISO20000 ITサービスマネジメントシステム
  • ISO22000 食品安全マネジメントシステム
  • ISO45001 労働安全衛生マネジメントシステム
  • ISO39001 道路交通安全マネジメントシステム
  • ISO50001 エネルギーマネジメントシステム
  • ISO22301 事業継続マネジメントシステム
  • ISO20121 イベント・サステナビリティマネジメントシステム
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