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パフォーマンス/パフォーマンス評価

掲載:2020年11月02日

執筆者:シニアコンサルタント 英 嘉明

用語集

パフォーマンスとは、ISOマネジメントシステムにおいて「測定可能な結果(measurable result)」を意味します(*1)。分かり易く言えば “出来栄え”や“実績”、“業績“であり、「あるべき姿や決めたことに対して、どこまでそれを達成できたかの結果である」と言えます。
(*1)統合版ISO補足指針2019年版 附属書L Appendix2 3.13

なお、ISOマネジメントシステムとは経営管理ツールの1つです。品質や環境、情報セキュリティ等の経営テーマに関し、国際的な知見(ベストプラクティス)を集約したPlan-Do-Check-Act(PDCA)を基礎とするマネジメントの枠組みです。組織は(P)において目標とその目標の達成計画を決め、(D)においてその達成計画を実行し、(C)において達成計画の実行結果と目標達成状況をチェックします。(A)では(C)の結果を踏まえた改善計画を策定し、実行します。

(C)において検討する達成計画の実行結果や目標達成状況がパフォーマンスに当たります。

         

パフォーマンスの種類

パフォーマンスには、数値で表す定量的なパフォーマンスと、質的な言葉で表す定性的なパフォーマンスとがあります。定量的なパフォーマンスとしては、例えば製品不適合件数、情報セキュリティ事故件数、納期順守率、研修受講者数などの数値があります。数値は事実を客観的にとらえ、誰が見ても分かり易い特徴がありますので、パフォーマンスは可能な限り定量化することが望ましいとも言えます。他方、定性的なパフォーマンスの例としては、「トップマネジメントは強いリーダーシップを発揮した」、「内部監査プロセスが内部監査ルールに則り適切に実施された」などがあります。プロセスや行動の過程に着目したパフォーマンスなどで定量化が難しい場合や総合的な評価がふさわしい場合は、言葉による表現が適切と言えます。但し、定性的なパフォーマンスの評価に当たっては、評価基準、例えばリーダーシップや内部監査プロセスの要件について明確化する必要があります。

パフォーマンスを測る対象は何か

先に解説したとおり、パフォーマンスとはISOマネジメントシステムにおける目標達成状況やプロセス、ルールの実施状況などを言います。それらを測るためには、測る目的を明らかにし、その目的との関連性が高いパフォーマンス指標を設定し、また必要に応じて目標値を決定する必要があります。ここで目的とは、パフォーマンス指標をWhat(何を)とするならば、Why(何のために)に当たるものを言います。
例を挙げて説明します。目的が「品質の向上」だとします。パフォーマンス指標として「お客様満足度(5点満点)」を、目標値として「平均4点を実現する」を設定したとします。このとき、結果が平均3.4点だったとすればパフォーマンス(目標達成率)は85%です。なお、目標値が設定されていない場合は、結果の平均3.4点がそのままお客様満足度のパフォーマンスになります。その他のパフォーマンスの例を以下に示しておきます。

目的 パフォーマンス指標 目標値 パフォーマンス
結果 目標達成率
品質の向上 お客様満足度・目標達成率 平均4.0点 平均3.4点 85%
お客様満足度 - 平均3.4点
納期順守度・目標達成率 90% 対象60件中順守55件(91.7%) 102%
スキル育成研修受講人日・目標達成率 800人・日 920人日 115%
年間クレーム件数 - 10件(前年(14件)比 -29%)
品質チェック実施度 - 対象200件中、
実施190件
95%
品質改善対策完了度・目標達成率 80% 対象15件中、
完了12件(80%)
100%
品質改善対策完了度 - 対象15件中、
完了12件
80%
情報機密性の維持 機密情報の漏洩件数(年間) - 2件
電子メール誤送信件数(年間) - 10件
PC,スマホ,記録媒体の紛失件数(年間) - 3件
クリアデスク違反率 5% 対象200人中
18人違反(9%)
1.4倍
情報セキュリティ社内研修の受講率・目標達成度 90% 対象200人中
186人受講(93%)
103%
ISOマネジメントシステムの適合性、有効性維持 外部監査不適合件数 - 不適合0件
品質方針の認識度 - 従業員50人中、
認識している人45人
90%
リスク管理の取り組み状況 - 取り組むべきリスクと対策が決定され、対策が全て実行された
文書管理ルールの順守状況 - 内部監査で観察事項2件が発見された
内部監査の実施状況 - 内部監査ルールに則り適切に実施され、内部監査報告書が経営者に提出された
是正処置の策定度 - 対象8件中、策定7件 88%

パフォーマンスに関してISOマネジメントシステムが求めている本質とは

ISOマネジメントシステムの規格では、パフォーマンスについて具体的に何を求めているのでしょうか。ISO規格9章パフォーマンス評価の9.1監視、測定、分析及び評価がパフォーマンスに関する要求事項で、次のようなものです。

9 パフォーマンス評価
9.1 監視、測定、分析及び評価
組織は次の事項を決定しなければならない。
a) 監視及び測定が必要な対象
b) 妥当な結果を確実にするために必要な,監視,測定,分析及び評価の方法
c) 監視及び測定の実施時期
d) 監視及び測定の結果の,分析及び評価の時期

※「ISO9001:2015 9パフォーマンス評価」より引用

このようにISOマネジメントシステムの規格では、パフォーマンスにおいて具体的に設けるべき指標を言及しているわけではなく、あくまでもそれら指標を決める際に、併せて明確にしておくことを述べています。9.1 a) b) c) d)の具体例を以下に示します。

目的 監視及び測定が必要な対象(a) 監視、測定、分析及び評価の方法(b) 監視及び測定の実施時期(c) 分析及び評価の時期(d)
品質の向上 お客様満足度
(総合満足度)
顧客アンケート送付、
平均点の目標4.0点
プロジェクト完了時 4月(10月に中間)
品質チェック実施度 品質チェック表の登録・内容確認 品質管理部が月次確認 4月(10月に中間)
ISOマネジメントシステムの適合性、有効性維持 品質方針の認識度 全従業員に対して品質クイズ実施、目標80% 10月 11月
文書管理ルールの順守状況 内部監査での文書サンプル調査 10月 11月

パフォーマンスはなぜ必要か

パフォーマンスの測定及び評価は、PDCA(Plan-Do-Check-Act)のCheckの要であり、PlanやDoの出来栄えや実績を明確化し、Act(改善)につなげ、継続的改善を実現するために不可欠な機能と言えます。

ISOマネジメントシステムを構築し、目標を設定し、ルールを決め、行動計画を立案しても、それらの実行結果であるパフォーマンスが分からないと、それらがうまくいっているのかどうかが不明で、改善の必要性や、改善に向けて何をすべきかの検討が難しくなります。また、そもそものマネジメントシステムの目的が実現しているかどうかも分かりません。つまり、パフォーマンスが分からないと、どんな良いことを考えても、その実現性は不透明で、”絵に描いた餅”になりかねないと言えます。

従って、ISO規格では、ISOマネジメントシステムの有効性を担保するために、内部監査において“パフォーマンスの測定・評価の実施状況及び有効性に関する事実情報”を収集し、マネジメントレビューにおいてそれらのパフォーマンスに関する情報をレビューし、必要に応じて改善策を決定することを要求しています。
(参考文献 統合版ISO補足指針2019年版 附属書L Appendix 2 共通の中核となるテキストの9.2 内部監査、9.3 マネジメントレビュー)

ISOマネジメントシステムを絵に描いた餅にしないために、マネジメントシステムの目的や目標、プロセス、ルール、達成計画の策定においては、それらのパフォーマンスの具体的な測定・評価方法も同時に決めておくことが極めて重要と言えます。

参考文献
  • 統合版ISO補足指針2019年版 附属書L Appendix 2 上位構造、共通の中核となるテキスト、 通用語及び中核となる定義
  • ISO9001-2015 品質マネジメントシステム ー 要求事項
  • ISO9000-2015 品質マネジメントシステム ー 基本及び用語
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