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事業者間ローミング

掲載:2023年02月01日

改訂:2024年06月19日

改訂者:ニュートン・コンサルティング 編集部

用語集

携帯電話やインターネット等のユーザーが、臨時的に契約している事業者以外のネットワークを利用してサービスを利用できるようにする仕組みのことを「ローミング」といいます。あらかじめ通信事業者が他社と連携しておくことで、自社のサービスエリア外でも通話やデータ通信のサービスを提供できます。

現在、総務省では、自然災害や通信障害等の非常時における通信手段を確保するため、携帯電話の「事業者間ローミング」の導入に向けた準備を進めています。

         

非常時における事業者間ローミングをめぐる検討の経緯

現在では、緊急通報の約6割が携帯電話から発信されているなど、携帯電話サービスは国民にとって不可欠なライフラインとなっています。そのため、総務省は2022年9月より「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会」を開催し、自然災害や通信障害等の非常時における通信手段の確保に向けて、携帯電話の事業者間ローミングなどの方策について検討を行ってきました。

「第1次報告書」(2022年12月)では、事業者間ローミングの導入に向けた基本的な方向性が示され、一般の通話やデータ通信、緊急通報受理機関からの呼び返しが可能な「フルローミング」方式の導入における基本方針が提示されました。

「第2次報告書」(2023年6月)では、「第1次報告書」からの継続課題となっていた、コアネットワークに障害が発生し「フルローミング」方式が実施困難である場合に導入する「緊急通報の発信のみ」を可能とする方式(以下、「緊急通報のみ」方式)についての基本方針がまとめられました。

さらに、「第3次報告書」(2024年5月)では、「第2次報告書」発出以降の検討状況や新たに整理された事項などが報告されています。

非常時における事業者間ローミングの基本的な考え方

「第3次報告書」では、それまでの検討や検証を踏まえ、改めて「事業者間ローミングとして実現されるべきサービスの在り方(基本的な考え方)」として以下の3つを提示しています。

1つ目の方針は、「発動されるタイミングが『非常時』であること」です。本報告書では、事業者間ローミングは「平常時には正常に行われていた通信が通信障害、災害等により一時的に不可能となった場合に代替的に提供されるサービス」と位置付けられています。

さらに、2つ目の方針として「技術的な事項以外の理由により利用者への制約を設けないようにすること」、3つ目に「利用者がSIMを切り替えることなく、通常契約している事業者とは異なる事業者の携帯電話回線から迂回して疎通させる機能として利用可能であること」が定められています。

「フルローミング」方式と「緊急通報のみ」方式について

「第1次報告書」にて、携帯電話事業者はできる限り早期の導入を目指すことが明記された「フルローミング」方式は、HSS(加入者データベース)による利用者認証や端末位置登録の完了後、一般の通話や緊急通報の発信が可能となるものです。また、緊急通報受理機関の指令台に発信者の電話番号が表示されるため、緊急通報受理機関から呼び返しができます。

一方、「フルローミング」方式が実施できない場合に導入される「緊急通報のみ」方式は、「コアネットワークにおいて利用者認証ができない※1」「発信者の電気通信番号が緊急通報受理機関に通知されない※2」「緊急通報受理機関からの呼び返しができない」などのデメリットがあるものの、コアネットワークに障害が発生した場合にも通報ができる有用な方式となっています。

「第3次報告書」では、「フルローミング」「緊急通報のみ」両方式の導入目標時期を「令和7年度(2025年度)末頃」と定め、官民連携により円滑な導入に向けた準備を進めるとしています。

※1・2 この点について、「第3次報告書」では、作業班の検討により「コアネットワークの一部に障害が発生している場合においても、HSSでの利用者の認証については機能する可能性があることが示された」としています。このため、「緊急通報のみ」方式の提供に当たっては、HSSでの認証が機能する場合(=「緊急通報のみ(認証あり)」方式)は電話番号が、認証が機能しない場合(「=緊急通報のみ(認証なし)」方式)はIMSI番号が、緊急通報受理機関に通知されることになるとしています。ただし、いずれの場合もその番号に対して呼び返しはできません。

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