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用語集

耐震診断

2015年03月27日

新耐震基準と耐震診断


耐震基準は建物を設計する上で最低限度の耐震能力を持つことを保証し建築を許可するための基準であり、現在の耐震基準は1981年の建築基準法施行令改正に伴って設定されたものです。以前の耐震基準と区別するために「新耐震基準」と呼ばれています。新耐震基準は、頻度の高い大きさの地震に対して建物の構造に損害がないようにし、滅多に起こらないが大きい地震に対しては、建物自体の被害よりも建物の中や周辺にいる人に被害が生じないことを目標としています。

 

耐震診断とは主に1981年以前の旧耐震基準で設計された建物を、新耐震基準に基づいて耐震性能の有無を確認することです。新耐震基準の適用を受けていない建物は当時の法規によって確認されたものなので、欠陥住宅などのような法違反にはあたりませんが「既存不適格」ということになります。耐震診断は、1995年の阪神淡路大震災の被害状況からその必要性が指摘され、「耐震改修促進法」の施行とともに広く認識されるようになりました。 旧耐震だけではなく新耐震基準で建てられたものについても劣化が懸念される場合には耐震診断を実施するケースがあります。

安全の判定基準

新耐震基準では大地震時に必要な「保有水平耐力」つまり建物が地震による水平方向の力に対応する強さを保有しているかどうかを検討するよう規定しています。ところが旧耐震の建物は設計法の違いにより「保有水平耐力」に基づいた方法では耐震性を測定することができません。

 

そこで耐震診断では、建物が保有している基本的な耐震性能(強度・粘り強さ)とバランスの良し悪し、経年劣化を考慮した、耐震指標(Is値)を用います。耐震改修促進法等では耐震指標の判定基準を0.6以上としています。つまり、Is値が0.6に満たない建物は耐震補強の必要があるということになります。

さらに、Is値が0.6以上の場合でも変形能力(粘り強さ)が高い建物の場合、地震の規模によっては大きく変形し大破する可能性があるため、建物の形状(SD)や累積強度(CT)を指標とし、建物の強度も判定基準としています。安全の判定基準はIs ≧ 0.6かつCT・SD ≧ 0.3となります。Is値が0.6の場合、震度5強程度の中地震で、柱・耐震壁にひび割れを生じる程度で、震度6強以上の大地震でも建物の倒壊には至りません。

耐震診断のレベル

耐震診断には目的に応じて三段階のレベルがあり、建物の構造や規模によって診断方法や耐震性の評価基準も異なります。

 

1.一次診断

壁が多い建物に適用され、建物の重量と壁、柱の断面積で推定する最も簡略な診断方法です。このため、設計図面があれば短時間で計算が可能です。
Is ≧ 0.8が基準となります。

2.二次診断

主に中層までの鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の建物に適用され、柱、壁、コンクリート強度、鉄筋量等から建物の強さと粘りを推定する方法です。設計図面があることが前提で、コンクリートの圧縮強度・中性化の試験、建物の劣化状態などの調査を実施します。最も一般的な方法で、耐震診断という場合はこの二次診断を示す場合が多いです。
Is ≧ 0.6が基準となります。

3.三次診断

高層や鉄骨造の建物が対象となり、二次診断の対象である柱と壁に梁を加え、各々の強さと粘りをより詳細な計算により推定する方法です。超高層の建物の場合はさらに、地震で建物がどのように変形するかを解析します。現行建築基準法の保有水平耐力計算とほぼ同程度のレベルで建物の終局耐力を計算しますが、計算上の仮定に左右されやすく、計算結果通りの耐力を保有するかどうかは慎重な判断が必要となります。
Is ≧ 0.6が基準となります。

耐震診断費用の目安

耐震診断の費用は、診断の内容、建物規模、構造などによって異なります。また設計図面の有無によっても大きく変わります。鉄筋コンクリート造で述床面積が1,000㎡ ~ 5,000㎡の建物で、概ね約800円/㎡ ~ 約2,000円/㎡です。述床面積が1,000㎡以下の建物の耐震診断費用は概ね1,500円/㎡以上となります。建物の階数にもよりますが延床面積の大きさと1㎡あたりの単価は反比例します。

 

一次診断は基本的に設計図面に基づく簡易計算であるため、およそ50万円~200万円が相場となります。仮に一次診断の結果をもとに引き続き、同一業者で二次診断あるいは三次診断を継続する場合、一次診断の業務内容がある程度二次、三次診断に含まれることから、一次診断費用の7割程度が免除されるケースもあります。

耐震診断の具体的な流れ

一般的な耐震化プロジェクトでは、まず予備調査によって耐震診断の必要性と緊急度を評価し、それにかかる費用を算出します。予備調査では現地での目視調査、設計図面の内容の確認、建物修繕履歴等を確認します。次に現地調査を行い、診断レベルに応じて必要な、基礎・地盤、劣化状況、部材寸法や配筋状況、コンクリート強度等の調査を行います。

 

1.外観劣化および図面不整合調査

建物外壁面の損傷状態や、建物内部のコンクリート面の目視観察を行い、表面のひび割れ、剥離、剥落、鉄筋の露出などの外壁損傷状況について写真、スケッチ等の記録を残します。また、柱、梁等の主要構造部材寸法、壁厚・壁開口寸法が図面と一致しているかどうかの調査を行います。さらに経年指標算定のために不同沈下(基礎や構造物が傾いて沈下すること)の傾向の有無を測定します。

2.コンクリート強度調査

建物のコンクリート壁面からコアを抜き取って、圧縮強度試験を行うことにより施工程度を把握し、耐震診断の計算に必要なコンクリートの圧縮強度を測定します。

3.中性化試験

鉄筋コンクリート造の建物の鉄筋は、コンクリートの強アルカリ性によって保護され、錆びにくくなっていますが、長期にわたる大気中の炭酸ガスや水の侵入によってアルカリ度が低下すると錆びやすくなりph = 8.5~10程度になると錆び始めるといわれます。コンクリートの中の鉄筋が錆びて膨張すると、鉄筋を覆っているかぶりコンクリートが押し出されてひび割れや剥落が生じ、構造物の耐久性能を低下させます。中性化試験によりコンクリートの劣化程度の指標を得ます。
これらの調査結果から得たデータに基づいて、前述の耐震指標(Is値)を算出し、最終的に耐震性能判定指標と比較して耐震性能を判定します。問題がなければ「耐震基準適合証明書」が発行されて終了ですが、耐震工事が必要であるとの結果が出た場合は補強設計、耐震工事へと進みます。

耐震診断のメリット

耐震診断は耐震補強の要否を判断するために不可欠ですが、調査することで、建物の劣化状況や施工状況を把握することができます。また、建物のどの箇所が弱いのかということも特定できます。つまり、耐震補強をするしないにかかわらず特徴を知ることで、命を守る対策がとれるというメリットがあります。
中古住宅を購入する際、木造住宅など非耐火構造の場合は築20年以内、マンションなど耐火構造の建物は築25年以内が住宅ローン控除の対象となりますが、それよりも古いものには適用されません。ところが、前述の「耐震基準適合証明書」が発行されている案件であれば築何年であっても住宅ローン控除の対象となります。

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