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減災

掲載:2013年02月20日

改訂:2024年11月13日

用語集

「減災」とは近年、防災とともに使われるようになった言葉で「災害による被害をできるだけ小さくする取り組み」をいいます。
減災という考え方が注目されるようになったのは1995年1月の阪神・淡路大震災以降とされています。それ以前の災害対策は「被害を出さない」ための「防災」に重点が置かれていましたが、阪神・淡路大震災での被害を目の当たりにし、大規模な自然災害に対して、被害を出さないための対策を取ることは難しい、現実的ではないと考えられるようになりました。被害を出さないのではなく、被害が出ることを想定したうえで、その被害をいかに最小限に留めるかという対策を事前に講じる取り組みが減災です。

         

防災と減災

「防災」と「減災」は次のように区別するとされています。

  • 防災: 災害に備えるための対策
  • 減災: 被害を最小限に留めるための対策

例えば水害対策の場合、川の水が氾濫しないための堤防整備などの対策は防災、氾濫した際に浸水などの被害を少なくするための対策は減災に区分されます。一般に、減災対策では、想定する被害のうち何をどの程度軽減させるべきかという優先付けを行い、重点的な対策が立てられます。

一方で、防災訓練や防災計画など、防災には従来から減災の要素が含まれるものもあります。「被害を防ぐ」という広い意味では減災も防災に含まれるため、これらを組み合わせた対策を取ることで被害を最小限に抑えられるとされています。

減災の取り組み-地域防災計画

各地方自治体では、地域防災計画をベースに減災の取り組みが進められています。

例えば東京都では、東日本大震災で得た教訓や令和4年4月に公表された「東京都の新たな被害想定について 首都直下地震等による東京の被害想定」 を踏まえて、令和5年に「東京都地域防災計画(震災編)」が修正されました。その中で、「2030年度(令和12年度)までに、首都直下地震等による人的・物的被害を概ね半減する」ことを減災目標として定めています。それぞれの指標については、地域防災計画の中で防災対策具体化のために示された3つの視点と分野横断的な視点に沿って、以下のように記されています。

視点1:家庭や地域における防災・減災対策の推進
項目 2030年度の目標
出火防止対策実施率(感震ブレーカー設置) 感震ブレーカー設置率 25%(都内)
木造住宅密集地域を中心に、感震ブレーカーの設置に対する支援や普及啓発の促進等を積極的に行い、都内における設置率を向上
初期消火対策実施率(消火器設置) 消火器保有率 60%(都内)
木造住宅密集地域を中心に、消火器の設置を促進するとともに、あわせて消火訓練の実施や風呂水の汲み置きなどの普及啓発等を行うなど、初期消火対策を促進
家具類の転倒・落下・移動防止対策 75%
各種普及啓発ツールの活用などにより、家具類の転倒防止等対策を促進
自助の備えを講じている都民の割合 100%
防災ブックなど各種媒体を活用し、都民が自ら考え、各家庭における備蓄などの防災対策が万全になる取組を推進
視点2:都民の生命と我が国の首都機能を守る応急体制の強化
項目 2030年度の目標
緊急輸送道路沿道建築物の耐震化促進
  • 特定沿道 総合到達率 99%(2025年度)
  • 一般沿道 耐震化率 90% (2025年度)
これまでの耐震助成に加え、アドバイザー制度の拡充等により、耐震化を促進
区市町村のBCP策定 都内全区市町村でBCPを策定
様々な事態にも対応できるBCPの作成・改定を促進
都内の受援応援体制の充実強化 都内全区市町村で受援応援計画等を策定
新たな被害想定や複合災害等を踏まえ、都内の受援応援体制を強化
一斉帰宅抑制等、帰宅困難者対策条例の内容を把握している事業者の割合 70%
都内滞留者の大半を占める企業従業員に対し、効果的な普及啓発を実施
一時滞在施設の確保 90%
行き場のない帰宅困難者のために必要となる一時滞在施設を早期確保
視点3:すべての被災者の安全で質の高い生活環境と早期の日常生活の回復
項目 2030年度の目標
つながる通信の確保 全ての避難所において通信環境を確保
被災者が集まる避難先におけるWi-Fi等の設置を促進
避難所環境の向上 全ての避難所における安全で質の高い生活環境の確保
避難所運営の向上や必要な物資の確保体制の整備等を通じて、避難所環境を不断に見直し
災害時トイレの確保 都内における災害時トイレ空白エリア解消
自助・共助・公助の連携による様々な方策を展開し、災害時に対応できるトイレを確保
分野横断的な視点:ハード対策
項目 2030年度の目標
緊急輸送道路沿道建築物の耐震化促進
  • 特定沿道 総合到達率 99%(2025年度)
  • 一般沿道 耐震化率 90% (2025年度)
これまでの耐震助成に加え、アドバイザー制度の拡充等により、耐震化を促進
住宅の耐震化
  • 旧耐震基準の耐震性が不十分な住宅を概ね解消(2025年度)
  • 新耐震基準の耐震性が不十分な木造住宅を半減(2030年度)
旧耐震基準の住宅やマンションはもとより、新耐震基準の中で、築年数が古く耐震性が不十分な木造住宅における耐震化を促進
無電柱化の推進 第一次緊急輸送道路 50%(2024年度まで)
環状七号線の内側エリアや第一次緊急輸送道路等など、都内全域における無電柱化を加速
水道管路の耐震継手化 断水率が高いと想定される地域の解消(2028年度まで)
都の被害想定で震災時の断水率が高いと想定される地域における水道管路の耐震継手化を重点的に推進
下水道管路の耐震化推進
  • 耐震化等を実施した施設の割合 93%(2025年度)
  • 浮上抑制対策を実施した道路の割合 93%(2025年度)
  • 避難所、災害復旧拠点、一時滞在施設や災害拠点連携病院などから排水を受け入れる下水道管の耐震化等を推進
  • 緊急輸送道路、無電柱化している道路や緊急道路障害物除去路線などにおけるマンホールの浮上抑制対策を推進

※東京都防災会議「東京都地域防災計画 震災編(令和5年修正)」をもとにニュートン・コンサルティングが作成