中堅企業のDX取り組みで大きな成果はまだ見られず、「DX動向2024」の考察を公開 IPA

掲載:2024年12月03日

サイバー速報

         
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情報処理推進機構(IPA)は11月20日、日本企業におけるDXの取り組みを戦略・技術・人材の観点から調査した「DX動向2024」の(以下、2023年度調査)のうち中堅企業に着目し、その取り組み内容や推進体制について考察したディスカッション・ペーパーを公表しました。人材やデジタルリテラシーといった観点から考察を行っています。

まず、中堅企業のDXの取り組みの実施状況に関しては、「取り組んでいる」と答えた割合が85.6%となり、2022年度調査の72.8%から伸びた結果となっています。他方、実際に成果を出している企業の割合は高くない点が指摘されています。

この原因については、DXの取り組みに関する経営層・従業員の姿勢や社内のしくみといった中堅企業独自の実情が関係していると推察しています。DX推進のための企業文化・風土に関する項目について調査を行ったところ、「できている」と答えた割合は中堅企業で20.3%でした。特に「職位間や部門間含め社内の風通しがよく、課題認識含めた情報共有がうまくいっている」、「多様な価値観を受容する」、「個人の事情に合わせた柔軟な働き方ができる」などの項目で「できている」割合が低くなっています。中堅企業は安定した事業基盤を有することが多く、2023年度調査では中堅企業の68.1%が設立51年以上で(中小企業は26.8%)、このような歴史の長さが縦割りの社内構造を生み出し、前述の結果につながっているのではないかと見ています。

次に、DXを推進する人材の状況について分析が行われました。中堅企業では、DXを推進する人材の「量」、「質」ともに「大幅に不足している」と回答した割合が大企業、中小企業と比べて最も高くなりました。また、DXを推進するために実施している取り組みでは、「社内人材の育成」(47.3%)、「既存人材の活用」(32.9%)が上位に上がったものの、この割合はそれぞれ大企業の約半分にとどまっています。

この原因については、中堅企業では従業員規模が小さい分、デジタルリテラシー向上のための取り組みや社内教育の時間を設けることが容易でないためではないかと推察されています。また、役員においても、従業員規模が小さいほどIT分野に見識がある者が「いない」割合が高く、企業のDX推進に一定の影響を及ぼしている可能性があるとも記されました。

まとめとして、中堅企業では、働き方の柔軟性や社内教育を設ける時間などの余裕が大企業と比べて少なく、その結果、従業員のデジタルリテラシー向上の取り組みも遅れているとしました。こうした課題を解決するためには、まずは経営層がビジョンを策定し、従業員と共有したうえで、現業と調整しながら徐々にデジタルリテラシーの向上やスキルアップを図り、DXを推進する人材を輩出することが望ましいと述べられています。

※本ディスカッション・ペーパーは、執筆者の見解に基づく内容であり、IPAとしての公式見解を示すものではありません。