国連は1月9日、「世界経済状況・予測2025」を発表しました。
この報告書によると、2025年の世界経済成長率は2.8%になる予測となっています。2023年の成長率は2.8%で、2024年の推定成長率も2.8%であることから、横ばいが続くことになると言えます。また、パンデミック前である2010年~2019年の平均成長率(3.2%)を依然として下回っています。こうした停滞の要因として、投資の低迷や生産性の伸び悩みなどが挙げられています。
同報告書では、国・地域別の経済成長予測も記載されています。例えば米国は、労働市場の弱体化や所得の伸び悩み、公共支出の削減などにより、2025年の経済成長率は2024年の2.8%から鈍化して1.9%になる予測となっています。ヨーロッパでは、インフレ緩和や労働市場の回復が民間消費や投資につながり、2024年の0.9%から2025年には1.3%に上昇する予測です。ただし、財政再建や地政学リスク、高齢化などの長期的な課題が、今後の経済成長の妨げになることも予想されています。
日本は2024年には-0.2%、2025年には1.0%、2026年には1.2%と、徐々に経済成長率が上昇する予測となっています。しかし、過度な金融引き締めは賃金上昇の鈍化につながりかねないため、その点において日銀が経済政策のジレンマに直面していると指摘しています。中国では2024年に4.9%、2025年には4.8%と好調な経済成長が見られる予測ですが、人口減少や貿易面の緊張などにより、中期的な成長が実現できない可能性も記されています。
南アジアは堅調な経済成長が見込まれている地域で、2025年には5.7%、さらに2026年には6.0%の成長が予測されています。特にインドでは、2025年に6.6%と安定した成長が見られる予測となっています。ただし、一部の経済地域における社会不安や政治的混乱などにより、南アジアの経済成長の見通しが立たなくなる可能性もあると指摘されています。
アフリカでは、エジプトやナイジェリアが地域の経済成長の回復をけん引し、経済成長率は2024年の3.4%から上昇して2025年には3.7%になる予測となっていますが、債務負担の長期化や若者の失業率の高さ、気候災害の深刻化などが今後の課題となっています。
また、今回の報告書では、SDGsの達成に向けた今後の課題についてもまとまっています。グリーン移行を加速させる上では、重要鉱物(リチウム、コバルト、レアアースなど)が大きな可能性をもっていることが強調されており、採掘や利益分配などで、公平性を念頭に置いた多国間協力が必要だとしています。そして、パンデミックからの立ち直りや、紛争、債務問題、社会的・経済的格差、気候変動など、横断的な課題が多数存在する状況であることから、大胆な国際協力が重要であるとしています。