日本の労働生産性を課題と認識している日本生産性本部はこのほど、今年で3回目となる「生産性課題に関するビジネスパーソンの意識調査」の結果を公表しました(調査は今年6月に実施)。今回も従業員規模300人以上の組織で働く、係長・主任などの「非管理職層」から「管理職層」および会長・社長・取締役・執行役員などの「経営層」までの2,945人を対象に、労働生産性に対する課題認識や、賃上げおよび生成AIの影響などを尋ねています。
それによると調査では、日本の時間当たり労働生産性について主要7か国(G7)で最下位、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中30位と説明した上で危機感を尋ねました。「かなり危機感がある」と「やや危機感がある」を選んだ人の割合は71.1%となり、昨年実施した前回調査と比べて4.1ポイント増加しました。
今年の春闘(春季労使交渉)では賃上げ率が5%を超えたといわれています。持続的な賃上げにより日本も主要先進国並みの賃金水準となるためにはどうすべきか質問したところ、「コスト上昇分を価格転嫁し企業収益を確保していく」との回答が最も多く30.4%、次いで「働く人のスキルアップ・リスキリングなど、能力開発を支援する」が29.2%となりました(回答は選択式で最大2つまで選べる)。回答を役職別でみると、役職が上がるほどこの2つを選ぶ割合が大きくなりました。例えば「コスト上昇分を価格転嫁し企業収益を確保していく」の割合は非管理職層では27.5%、管理職層では30.2%、経営層では35.2%となりました。
高い賃上げ率となった今年は6月に実質賃金(※)が27カ月ぶりに増加に転じたといわれています。賃上げの実感が物価上昇と見合っているかどうか尋ねたところ、全役職で「あまり見合っていない」とする回答が最も多く、3割前後となりました。一方、「以前から見合うものだった」と「かなり見合う」の合計は経営層では26.7%、管理職層では10.1%、非管理職層では5.6%となりました。
昨年調査に続き、今年も生成AIの普及と働き方の変化について尋ねています。昨年と同様、「無駄な作業・業務が減り、ワークライフバランスが改善する」を選んだ人の割合が最も多く27.6%となりました。昨年と比べ0.5ポイント増でした。一方、最も割合が低くなった選択肢は「自分の仕事が代替される脅威を感じる」の5.2%であり、昨年調査と比べ1.4ポイント減りました。
※実質賃金は6月と7月はプラスとなりましたが、8月には再びマイナスに転じました。