中小企業庁はこのほど、2025年版の中小企業白書・小規模企業白書を公表しました。白書はそれぞれ2部構成で、第1部は2024年度の中小企業・小規模事業者の動向をまとめ、同じ内容となっています。一方、第2部は「経営力」に焦点を当てた分析を行っています。中小企業白書では中小企業の成長戦略やスケールアップへの挑戦を、小規模企業白書では特定の地域に根ざし地域課題の解決を事業の中心に据えるといった小規模事業者への期待など、それぞれの特性や課題に合わせたテーマを扱っています。
中小企業・小規模事業者を取り巻く外部環境や直面する課題について概観した第1部ではまず、「金利のある時代」が30年ぶりに到来したことが強調されました。借入金の依存度が高い中小企業・小規模事業者にとって金利のある世界は利益を圧迫する要因となるほか、2024年度も円安が継続したことで、輸出より輸入比率が高い中小企業・小規模事業者は仕入れコスト増に直面しました。
具体的には、中小企業全体の経常利益は長期的には上昇傾向にあるものの、大企業と比較して伸び悩み、その差は拡大しました。業況が「好転」した割合から「悪化」した割合を差し引いた値(業況判断DI)は、足踏みの傾向が続き、製造業・建設業ではコロナ前の水準よりも低くなりました。業況判断DIは値がプラスなら「好転」傾向となりますが、マイナスが続いています。
また、ほとんどの業種においてコロナ禍以降、人手不足感が強まっています。人件費・物価の高騰にあっても、価格への転嫁は道半ばであると指摘しています。
続く第2部では、第1部で指摘した課題を乗り越え成長・発展を遂げるには、「経営力」が重要だと位置づけ、事例を交えながら経営力の多面的な定義と実証分析が記されています。経営力とは、経営者が自ら置かれている状況と方向性を把握し、的確な対策を講じる力です。経営者の「学び直し」や異業種交流の有無、組織のオープン性など複数の観点から経営力を捉え、これらが業績や賃上げ、投資意欲にどう結び付くかをデータで示しています。
企業の事例では、BCP策定などの取り組みが顧客からの信頼獲得につながったほか、日ごろから代替となる仕入先・外注先の検討および製造工程の見直しを進めたことが、コスト削減と生産効率の向上に貢献したとする山形県の企業が紹介されています。同社では、BCP関連の取り組みが従業員の心理的安全性の担保につながり、人材確保の一助にもなったとされています。