
リスクに関する組織風土を「リスクカルチャー」と呼びます。組織のメンバーがリスクに対してどのような認識を持ち、どのように行動するかの基盤がリスクカルチャーであり、リスクマネジメント活動の推進に当たっては、リスクカルチャーを考慮することが必要になります。
緻密なERM(全社的リスクマネジメント)のシステムを導入している組織でも、事故や不祥事が起きることは少なくありません。システムが完璧でも、それを動かす基盤となるリスクカルチャーが健全に保たれていないと機能不全に陥るからです。具体的には、リスクを報告するラインが整備されている組織でも「上司が報告に対して熱意を持って取り合ってくれない」「リスクを報告した人が対処までしなければならず『正直者が馬鹿を見る』空気がある」といった事例が挙げられます。逆に、リスクカルチャーが健全な組織では、組織内で自然とリスク情報が共有され、リスク対応がなされています。
組織のリスクマネジメントを考える際には、自組織のリスクカルチャーがどのようなレベルにあるか現状を把握することが重要です。その上で、必要に応じて、望ましいリスクカルチャー醸成に向けた活動を検討することになります。ただし、リスクカルチャーは定量的に把握することが難しいため、事前にリスクカルチャー評価基準を明確化し、組織の構成や階層に応じた評価を行うといった対応が求められます。