内閣府はこのほど、「世界経済の潮流2024年Ⅱ」を公表しました。「世界経済の潮流」は内閣府が2002年から公表している報告書で、今回は「中国の構造問題と世界経済への影響」が副題となっています。
「第1章 中国経済が世界経済に与える影響」では、2010年以降、中国の経済規模は世界第2位を維持している一方で、人口減少と少子高齢化の進行が今後の経済成長を押し下げる見通しであると記されています。
また、この章では中国の「過剰供給」問題についても分析しています。「過剰供給」とは、国内需要を上回って生産された財が安価に輸出され、輸入国側の経済や雇用に影響を与えることです。2024年、中国は、鉄鋼や自動車などの「過剰供給」について欧米から相次いで指摘されました。本章では試算・分析の結果をもとに、中国国内の不動産市場の停滞に伴って内需全体が伸び悩み、鉄鋼や自動車に対する国内需要も減退することが、「過剰供給」を生じさせると示唆しています。また、鉄鋼を例に「過剰供給」が世界経済に与える影響を試算したところ、輸入側となる国や地域の産業構造によって影響は異なるものの、競合する鉄鋼業が立地する国・地域では、鉄鋼価格の下落と実質GDPの低下につながる可能性があると示されています。
中国の貿易収支に関しては、大幅な黒字を継続していることが記載されています。貿易相手国・地域については、アメリカや日本、EUなどの先進国から、ASEAN諸国など途上国へと多角化が進んでいると記されています。
続く「第2章 2024年後半の世界経済の動向」では、アメリカや欧州の経済動向などもふまえ、今後の世界経済のリスク要因について解説しています。具体的には、中国における不動産市場の停滞の継続に伴う影響のほかにも、アメリカの政策動向による影響や、欧米における高い金利水準の継続、中東地域やウクライナ侵略をめぐる地政学的リスクが挙げられています。