国土交通省は6月2日、「協働防護計画作成ガイドライン(Ver.1.0)」と「港湾立地企業における気候変動リスク評価手法ガイドライン(Ver.1.0)」を公表しました。
昨今、気候変動による海面上昇が深刻化しています。公共・民間の多様な主体が集積する港湾では、一部の主体が所有する護岸対応が不十分な場合、浸水被害が港湾全体に及ぶ恐れがあります。そのため、官民の港湾関係者が共通の目標に向かって適応策に取り組む「協働防護」が重要です。今年4月、国土交通省は「協働防護」の枠組みを港湾法に位置付け、協働防護計画作成費の補助や、民間所有護岸などに対する税制特例措置が今年度から創設されました。
さらに、有識者会議の議論を経てこのたび公表されたのが、「協働防護計画作成ガイドライン(Ver.1.0)」と「港湾立地企業における気候変動リスク評価手法ガイドライン(Ver.1.0)」です。
「協働防護計画作成ガイドライン(Ver.1.0)」は、港湾管理者が主な対象となっており、協働防護計画作成の手順・ポイントなどを解説したものです。
本ガイドラインによると、協働防護による気候変動への適応は次のような流れになります。まず、港湾全体としての目標水準(海面水位の上昇シナリオや台風の強度などの外力をふまえた基本的な考え方)を港湾計画として記載します。
港湾計画の記載を実現するために、既存施設の性能照査、埠頭の脆弱性評価を実施し、それらを踏まえて気候変動を考慮した浸水想定の作成、適応水準や適応時期の検討を行い、協働防護計画を作成します。港湾管理者は、協働防護計画の作成に際して、協働防護計画に定めようとする事業を実施すると見込まれる関係者から成る協働防護協議会を組織することができます。
「港湾立地企業における気候変動リスク評価手法ガイドライン(Ver.1.0)」は、港湾立地企業が主な対象となっています。気候関連情報を評価・開示することが国際的な潮流になっている中、本ガイドラインでは、気候関連リスクの中でも特に港湾に関係の深い高潮・津波などによる浸水リスクの評価についてポイントを解説しています。具体的には、海面水位の将来変化の検討手法などを説明。また、情報開示の事例や、近年の港湾全体としての気候変動適応対策の事例も掲載しています。
2つのガイドラインの全文は、国土交通省のホームページに掲載されています。