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干ばつ

掲載:2022年12月01日

用語集

「干ばつ」は長期にわたって降水量が平均を下回り、水不足が続くことをいいます。干ばつは広範囲の地域に長期間に及ぶ影響を与え、穀物をはじめとする世界の農業生産に甚大な被害をもたらします。干ばつには種類があり、降水量不足により植物の生育等を阻害する「気象干ばつ」が発生すると、土壌の水分量低下によって農業や畜産に被害を与える「土壌干ばつ」・「農業干ばつ」、さらに湖や地下水などの水量が低下し水不足となる「水文かんばつ」が連鎖的に生じます。

近年、地球温暖化の影響等により干ばつの被害が世界的に深刻化し、大きな問題となっています。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の調査によると、過去27年間(1983年~2009年)で世界の主要穀物の栽培面積のうち4分の3が干ばつによる被害を受けたことがあり、総生産被害額は約1,660億ドルにのぼります。

2022年は、世界各地で甚大な干ばつ被害が報じられました。欧州干ばつ観測所(EDO)の2022年8月の報告書では、欧州の47%が「警告」、17%が「警戒」の状態にあるとされています。欧州委員会は「過去500年で最悪」の干ばつであると述べており、その影響は農作物の収穫や船舶の運航、水力発電など多方面に及んでいます。アメリカの干ばつ被害も甚大です。米国海洋大気庁(NOAA)の情報によると、2022年11月上旬には全米の50%以上が干ばつの状態にあり、特に中西部では数年にわたって深刻な干ばつが続いています。

夏に記録的な猛暑に見舞われた中国でも、長江の一部で川底が露出するなど干ばつが深刻化し、電力供給や農作物への甚大な被害が生じました。干ばつの抑制のため、中国や中東、アフリカの一部の国ではヨウ化銀などを使用した人工降雨の取り組みが検討されています。また、過去50年間で50万人以上が干ばつ被害で命を落としてきたとされるアフリカでは、特に「アフリカの角」(ソマリアやエチオピア、ケニアなどを含むアフリカ大陸東部の地域)が過去40年で最悪の状態といわれ、飢餓と栄養不良の深刻化に直面しています。

欧米の気象学者らによる国際的な研究グループ「ワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)」は、2022年10月、今夏に北半球を襲った干ばつは地球温暖化によって20倍起こりやすい状態になっていたとの研究結果を発表しました。また、国立環境研究所や東京大学、韓国科学技術院などの国際研究チームが6月に発表した研究結果は、「特定の地域では、今世紀の前半もしくは半ば頃までに、過去最大の干ばつを少なくとも5年以上継続して超える時期を迎え」、「温室効果ガスの排出削減を強く進めた場合でも、今後数十年のうちにそのような記録超えが常態的になる地域が複数ある」としています。一方で、同研究では温室効果ガスの排出削減による効果も示され、脱炭素社会の実現の取り組みとともに特定地域における適応策の推進が重要であるとしています。

2022年5月にコートジボワールのアビジャンで開催された国連砂漠化対処条約(UNCCD)第15回締約国会議(COP15)では、干ばつの壊滅的な影響に対する回復力を高め、将来のために土地回復に投資することが誓約されました。世界の食糧やエネルギー供給に多大な被害をもたらす干ばつは我が国の食糧供給等に大きな打撃を与える可能性もあり、日本にとっても対岸の火事ではありません。干ばつを深刻化させる大きな要因である地球温暖化防止のため、脱炭素社会の実現が喫緊の課題となっています。

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