木造住宅密集地域
掲載:2023年03月13日
用語集
「木造住宅密集地域」とは、狭いエリアに木造住宅が密集している地域のことをいいます。第二次世界大戦の被害を免れた昔ながらの地区に多く、老朽住宅の割合も高いために地震の際の倒壊による緊急車両の不通や火事の延焼による被害が拡大しやすいとされ、防災性向上の対策が急がれています。略して「木密(もくみつ)地域」とも呼ばれ、東京、大阪、名古屋など大都市に共通する都市整備の課題となっています。
阪神・淡路大震災の教訓、木密地域の危険性
1995年の阪神・淡路大震災では、木密地域が広範囲に延焼して甚大な被害が発生し、その危険性が知られるようになりました。神戸市長田区など複数個所から火の手が上がり、83ヘクタール、7000棟以上が焼失しています。
震災後、国は「密集住宅市街地整備促進事業」などで木密地域の解消に取り組んできました。2012年には取り組みを加速させるために「地震時等に著しく危険な密集市街地」(以下、危険な密集市街地)として、木密地域のなかでも特に災害時において安全性の確保が困難な地域を公表しました。全国に197地区、5745ヘクタールが指定され、その約4割が大阪府で約2248ヘクタール、次いで東京都が1683ヘクタールとなっています。
「危険な密集市街地」の解消には、不燃性や耐震性のある住居への建て替え、延焼を防ぐ公園の整備、避難をしやすくする道路拡幅などが必要です。しかし、住民の高齢化や複雑な権利関係にある用地買収の難しさから整備は進まず、2020年時点で45パーセントしか解消されていません。
東京都の木密地域対策と現状
木密地域の解消が全国的に困難な状況にあるなか、東京都は国より厳しい独自の基準で木密地域の危険性を可視化し、整備を加速させ成果を上げています。
2012年に「木密地域不燃化10年プロジェクト」を立ち上げて、特に危険性の高い地域の建て替え費用を補助したり、道路整備や建て替えの協力者に固定資産税や都市計画税の減免制度を設けてきました。国が指定した「危険な密集市街地」も8割が解消しています。
2022年5月、東京都が公表した首都直下地震の被害想定では、10年前の前回想定に比べて倒壊棟数や死者数が3割減ると予想されました。耐震化や木密地域の解消が進んだ結果とされていますが、それでもなお死者数は最大約6200人に上ると予測されています。今後もさらに木密地域を中心とした建物倒壊や延焼を防ぐための整備と、私たち一人ひとりの防災・減災意識の向上が求められています。