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災害時におけるドローンの活用と注意点

掲載:2020年10月08日

コラム

昨今、ドローンが単なる撮影機材として使われるだけでなく、災害時の有効なツールとしても利用が検討されるようになってきました。そこで本稿では、災害時という特殊な状況におけるドローンの活用方法を紹介するとともに、使用時に留意すべき法律や注意点等を解説していきます。

         

ドローンとは

ドローンについておさらいをしておきましょう。ドローンは正規名称を「小型無人航空機」といい、国土交通省によると下記のような定義づけがされています。

  • 固定翼機・回転翼機・滑空機・飛行船のどれか
  • 構造上、人が乗れないもの
  • 遠隔操作(リモコン)または自動操縦(オートパイロット)により飛行が可能なもの(200g未満のものは除く=模型飛行機に分類)
  • GPSセンサは必須ではない

ドローンは一般的に空撮(空からの対象物の撮影)として使用されることが多く、一般流通されているものの殆どは、撮影用機器として販売されています。
しかし、元々は小型のラジコンヘリコプター等で行われていた農薬散布などがドローンによって行われるようになり、業務活用の場も増えてきています。主にマルチコプターと呼ばれる4つ以上の回転翼を持ったドローンが業務活用される機会も増え、高層建物の外壁調査や危険個所の空撮調査などにも利用されています。

ドローンの特性は操縦の簡単さと安定した飛行性能にあるといえます。もとより4枚以上の羽根を持つことで、水平状態を保ちやすい形態をしているため、空中で同じ場所に留まり続けるホバリングという動作がヘリコプターと比べ簡単です。
また、ドローンにはGPS機能を備えることができ、指定の場所への移動や停止、発進場所への帰還なども自動的に行うことが可能です。

ドローンの性能と災害時活用例

ドローンの安定性を活かし、撮影機器として使用されることが多いのですが、この撮影機能が災害時に活用される場面もあります。

例えば、被害状況の確認や危険個所での行方不明者の探索などでその機能が発揮されます。実際に平成28年(2016年)熊本地震や2017年にカリフォルニア州南部で発生した大規模な山火事では被害状況の確認や住民の安否確認のため、ドローンの空撮機能が使用されました。平成29年7月九州北部豪雨でも、被害を受けた地域を国土地理院がドローンで撮影を行い、被害の様相がWeb上にて公開されました(※1)。

このように、ドローンは車両や人の移動が難しい場所での撮影が出来るほか、無人機の特性を活かし、危険と思われる空間に入っていくことも可能です。この利点を活用することで、安全な場所に留まりながら、被害状況の確認を行うことが可能となります。

ドローン利用に関わる法律について

それでは早速ドローンを使ってみたいところですが、実際にドローンを使用する際には、国土交通省が定める「無人航空機に係る航空法」を遵守しなければなりません。すなわち、実際にドローンを操縦する場合や使用可能な場所については、あらかじめ把握しておく必要があります。

なお、航空法にはドローンの飛行が禁止される場所や条件等が記載されており、主な内容は下記の通りです。

<飛行が制限されている空域>※2
  • 空港等の周辺の空域
  • 地表又は水面から150m以上の高さの空域
  • 人口集中地区の上空
<遵守しなければならない飛行方法>※3
  • アルコール又は薬物等の影響下で飛行させないこと
  • 飛行前確認を行うこと
  • 航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するよう飛行させること
  • 他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと
  • 日中(日出から日没まで)に飛行させること
  • 目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること
  • 第三者又は第三者の建物、第三者の車両などの物件との間に距離(30m)を保って飛行させること
  • 祭礼、縁日など多数の人が集まる催し場所の上空で飛行させないこと
  • 爆発物など危険物を輸送しないこと
  • 無人航空機から物を投下しないこと

ドローン利用の災害時の特例について

それでは、災害時の被害確認や救助活動など、人命に関わる緊急事態のような場面で使用する場合はどうでしょうか。実は、自分たちの判断で使用する場合、災害発生時のような緊急時であっても、事前申請なしにドローンを飛行させてしまうと、場所によっては航空法違反に該当してしまいます。

それは航空法で「道府県警察、国・地方公共団体又はこれらから依頼を受けた者が、事故・災害に際し、捜索、救助のために無人航空機を飛行させる場合に該当する場合には、航空法に関する規制等が適用されなくなり、事前申請等が必要なくドローンの使用が可能となる」と述べていることからもわかります。国や行政機関からの正式な依頼を受けている場合にのみ災害時のドローン利用が可能ということは、そうでない場合には使用の許可申請が必要となるわけです。

ただし、航空法はあくまで屋外での飛行を対象としている法律であるため、屋内での操縦に関しては上記制限の対象になりません。つまり施設 “内”でドローンを飛行させる場合には、事前の申請等の必要はなく、自由にドローンを使用することが可能です。ドローンの大きさや飛行スピードに関する制限も特にないため、平時・緊急時問わず、利用することができます。

ちなみに、「航空法」で 規制されているエリアや飛行方法でドローンを飛行させたい場合、「航空局(国土交通大臣)」への申請が必要になります。申請はオンライン上でも可能で、国土交通省が運営している「DIPS(Drone/UAS Information Platform System)」にて申請を行うことができます。通常はドローンを飛行させる日程を申請する必要がありますが、災害発生は事前に予見ができません。使用目的と飛行させる範囲を明確にすれば、年間を通じた期間申請も可能です(ただし、使用状況に関する定期的な報告を求められることがあります)。

ドローンを活用したBCP活動

それでは、そんなドローンを企業はBCPの中で、どのように活用できるでしょうか。 まず考えられるのは、発災直後の安否・被害確認でしょう。災害発生後、拠点敷地内の被害確認を迅速に行う必要がある場合や、発災後に建物内へ入館することが躊躇われる場合にはドローンを有効活用できると思われます。

ほとんどのドローンには撮影用カメラが搭載されており、操縦桿にモニターやスマートフォンを接続すれば、リアルタイムでドローンからのカメラ映像を確認できます。人が立ち入ると危険と思われるエリアに対し、ドローンによる状況確認ができるほか、事前に使用申請が行えておれば、拠点敷地内上空からの被害状況の確認も可能となります。
またリアルタイムで現地の映像共有や状況確認を行うことができれば、発災後の初動対応だけでなく、状況把握を含めた対策本部活動の一環として活用することも可能と思われます。

例えば、日本GLP株式会社は楽天AirMap株式会社と連携し、2019年10月から施設点検、および災害時の状況確認等のBCP対応を目的としたドローンの導入・運用を開始しています。赤外線カメラを搭載したドローンを導入し、サーモグラフィ撮影による設備の劣化や異常個所の早期発見を可能にしており、点検に掛かる時間の削減や作業員の負担軽減、施設管理業務の効率化を図っています。またドローン機材は常時保有し、指定の認定講習を修了した操縦者を配置しており、災害時のドローン活用も想定した取り組みを進めています(※4)。

またAIG損害保険株式会社では台風や豪雨などによる大規模水害が発生した際に、浸水被害が集中している地域をドローンで空撮し、契約物件の浸水状況を把握する仕組みを導入しています。ドローン画像より生成したデジタル地表モデルとドローンパイロットが測定した当該地域内の測定地点での浸水深度を組み合わせて浸水被害状況を把握し、損害の認定までの時間を短縮することに成功しています。2019年に甚大な被害をもたらした台風19号では、この方法を活用することで、迅速に業務を遂行した事例もあったそうです(※5)。

ドローンを日常的に見ることは少なく、使用するイメージは湧きにくいかもしれません。しかし、その特性に注目すれば、社内の災害用ツールとして活用することもできるはずです。もし社員の中にドローンを所有している方がいらしたら、避難訓練やBCP訓練の中で実際に使用してもらうなどの機会を設けてみてはいかがでしょうか。実際に間近で見たり触れたりすることで、活用するイメージも膨らんでくるでしょう。

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