「事業継続ガイドライン」(内閣府)の拡充も提案、防災・減災対策の充実に向けて提言書を公表 経団連
日本経済団体連合は17日、首都直下地震をはじめとする巨大地震を見据えた防災・減災対策の充実に向けた提言を公表しました。官民連携による事業継続計画(BCP)の高度化が必要などと訴えています。
防災・減災対策を進めるための基本的な考え方として、「日頃から」「ともに」「スマートに」防災に取り組むことを提起しました。具体的には、平時と災害時を区別せずに活用できる「フェーズフリー」の概念を浸透させることや、公助の限界を正しく認識し自助・共助の取り組みを強化すること、防災DXも積極的に導入・活用し情報収集を効率的に実施することなどを掲げています。
提言書では、企業は大規模災害の発生を念頭にBCPの改訂を急ぐ動きが顕著であると紹介した上で、課題として防災・減災対策に取り組む際の費用対効果をステークホルダーに説明しにくい面もあるとしました。そのため政府には防災・減災対策のインセンティブとなる施策や、防災・減災対策を講じることで市場から評価されるような仕組みを求めました。
一例として、一定の基準を満たしたビルをエリア防災ビルとして政府が認証し、認証されれば建物の容積率を緩和するといった仕組みを挙げています。また、防災・減災への取り組みにサステナビリティ投資を呼び込むため、レジリエンス分野でのインパクトの指標を確立し、インパクト投資を招来すべきとしました。
企業のBCPを高度化するために、政府のBCPの内容を可能な限り開示することや、情報開示の窓口を明確化することも求めました。発災時に各主体が同時に事業継続を試みた場合、限られた資源を奪い合い、秩序ある応急・復旧活動ができなくなることが懸念されると指摘しています。また、「事業継続ガイドライン」(内閣府、2023年3月改定)については、首都直下地震の新たな想定に基づいた、複合災害を見据えた備蓄の考え方や訓練の仕方といった多くの企業がイメージしやすい形での拡充を提案しました。
都心に本社を構える企業が多いなか、首都直下地震に備えて本社機能や事業所、データセンターの代替拠点を整備することが企業に求められています。企業が災害リスクの高いエリアから災害リスクの少ない地域や防災・減災対策の進んだ地域に自発的に移転することは、防災のみならず地域活性化の観点からも有効です。そのため、移転・分散を決定した企業に対しては、「地方拠点強化税制」における法人税の優遇措置や固定資産税の免除といった継続的な公的支援を期待すると記されています。
首都直下地震が発生した場合、帰宅困難者数は1都4県で最大約800万人と想定されています。その帰宅困難者の受け入れについて一部の事業者に負担が偏らないよう、幅広い業種・団体・法人での受け入れを促進する必要があると訴えました。「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策のガイドライン」(2024年7月改訂)の内容を周知するとともに、一時滞在施設の提供者が増えるよう、提供者が負う責任を明確化する必要があるとしました。
政府が2026年度中の設置をめざす防災庁についても提言しています。防災・減災の視点で政府の政策に横串を指す役割を担うべきであり、省庁横断的に政策を推進するための十分な権限を持つべきだと提言しています。