国土交通省は6月24日、令和7年版の国土交通白書を公開しました。少子高齢化・人口減少が深刻化する中、物流の「2024年問題」やエネルギー・資材の高騰なども影響して物流やインフラ、地域公共交通などのサービス維持および存続が危ぶまれる状況となっています。今般公表された白書では、担い手不足などによってサービス供給が制約されることについて調査した結果などを取り上げています。
白書によると、建設業や運輸業において高齢化が深刻化しています。就業者の年齢構成の推移を産業別で見ると、2024年における55歳以上の割合は、全産業では32.4%である一方、建設業は36.7%、運輸業は33.9%と高くなっています。また、29歳以下の割合は、全産業では16.9%である一方、建設業は11.7%、運輸業は11.0%と低く推移しています。さらに今後、高齢就業者が退職することを想定すると、担い手の確保と育成が喫緊の課題となっています。
建設業は長年、3K(きつい・汚い・危険)といわれていましたが、持続可能な産業として発展していくためには新3K(給与がよい・休暇が取れる・希望が持てる)産業に変えていく必要があるとし、処遇改善や働き方改革を進めるための新ルールを「担い手3法」(※)の第3次改正(2024年6月成立)において盛り込んだと記されています。
宅配便が確実に届いたり、水道インフラのメンテナンスによって断水が防げたりするといった生活に必要な身近なサービスの維持・存続のためには、それらを担う業種の賃上げ・働き方改革のほかに、新技術による省人化・省力化の推進▽供給方法の見直し▽需要者側の協力――といったことも求められます。
需要者側の協力については、「サービスレベルの低下を受け入れる国民的合意の形成が期待される」などと記したコラムが収録されました。持続可能な社会を目指す上では、「需要者側にとっては効率性・合理性に資するものが、他方で、供給者側に対し、非効率を担わせ、結果、供給制約につながることもあり得る」と記され、供給者側の取り組みだけではなく、需要者側を巻き込みながらサービスの供給方法の見直しを進め、需要者側の受容・協力によりサービスの維持・存続を図ることが重要だとしました。
白書では、サービスレベルの低下を個人がどの程度受け入れるのかを調査した結果が収録されています(国土交通省「国民意識調査」2025年2月)。調査は全国の3,000人を対象にインターネットで実施されました。
それによると、サービスの維持と値上げの関係については「サービス提供を維持するためであれば、多少の値上げはやむを得ない」と回答した人が最も多く40.1%、「値上げ・サービス低下いずれも受け入れられない」と回答した人の割合13.2%を26.9ポイント上回りました。また、宅配便の受け取り場所について自宅以外を指定することについて尋ねたところ、最も多かったのは「やむをえず受け入れる」で38.7%でした。「問題なく受け入れられる」と合わせると全体の54.3%が自宅以外での受け取りを受け入れられると答えました。
白書はこのほか、昨年度の国土交通行政の動向が第Ⅱ部にまとめられています。
※建設業法、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)、公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)