日本商工会議所は2月20日、「東日本大震災からの復興・創生に関する要望」を公表しました。
この要望書は、東日本大震災の被災地域への現地訪問で得られた声や事例、東北六県商工会議所連合会、東日本大震災沿岸部被災地区商工会議所連絡会から寄せられた意見・要望などをふまえて作成されたものです。「Ⅰ.原子力災害の克服、福島の再生」と「Ⅱ.創造的復興の実現に向けた取組みの加速・深化」の2つの柱から構成されています。
「Ⅰ.原子力災害の克服、福島の再生」では、ALPS処理水の海洋放出などに伴う諸外国の輸入規制により、被災地の基幹産業である水産業において、売上減少やビジネス機会の損失といった影響が出ていることが指摘されています。本要望書では国に対して、諸外国の輸入規制早期撤廃に関する働きかけの強化や、徹底した風評被害対策、公正・公平な損害賠償などを行うよう求めています。また、水産物の地域ブランドの確立や消費拡大、新事業展開などに向けて、国の継続的な支援が必要だとしています。
また、福島国際研究教育機構(F-REI)を中核とした「福島イノベーション・コースト構想」の波及効果が十分に得られていないという声をふまえ、国に対して、意欲的な地元企業による成長投資への支援を強化することや、各種プロジェクトへの地元企業の参画を促進することなどを要望しています。
観光誘客についても要望がまとまっています。福島県は2023年度に訪日外国人観光客の延べ宿泊者数が過去最高を更新した一方で、沿岸の浜通り地区では入込客数が震災前の約7割にとどまるなど、地域によって誘客状況がまだらであることが記されています。加えて、学校などでの震災遺構や復興現場を巡るツアーが減少傾向にある現状も指摘されています。こうした状況をふまえ、国は観光誘客に向けた取り組みの後押しや、震災の記憶の風化を防ぐための支援を行うべきとしています。
「Ⅱ.創造的復興の実現に向けた取組みの加速・深化」では、東北地域の域内GDPは震災前の水準を超えたものの、人口減少が進行しているなど、課題もあると指摘されています。また、東日本大震災以降の度重なる災害やコロナ禍によって、被災地の中小企業では、経営再建がいまだ途上にある事業者も少なくないとしています。こうした状況を受けて、国に対し、中小企業の再生支援や産業人材育成支援などの強化を求めています。また、被災地に新たな投資や消費、人流を呼び込むためには、道路・鉄道・港湾・空港といったインフラ整備の推進が必要だと記載されています。
さらに、各地で甚大な自然災害が頻発しており、巨大地震のリスクも高まる中、大規模災害時にも地域経済を早期に復旧・復興できるようにするためには、東日本大震災の教訓をふまえ、平時からの「事前防災」が重要であるとしています。そして、その取り組みを推進するにあたっては国が前面に立つことが求められると提言しています。
日本商工会議所は、この要望書を復興庁や政府などの関係各所へ提出し、要望の実現に向けて働きかける予定となっています。