特定技能受け入れへ、追加要件に対応した第三者監査制度「JASTI監査制度」の運用を開始 JASTI統括事務局
「JASTI監査制度」が今年度から始まったことを受け、日本繊維産業連盟は「JASTI統括事務局」を設置し、4月1日付けで業務を開始しました。JASTI監査制度とは、経済産業省が今年3月に策定した監査要求事項・評価基準「Japanese Audit Standard for Textile Industry(JASTI)」に基づく第三者監査制度のことです。この制度は繊維企業が特定技能外国人を受け入れる際、要件が満たされていることを確認するための認証・監査制度の一つです。
繊維業は「特定技能」制度における特定産業分野「工業製品製造業分野」の対象業務となりました(2024年3月閣議決定)。ただ、繊維業は「技能実習」制度において、賃金の支払いに関する違反が多かったため、特定技能制度において違反をなくし適正な取引を推進するため、追加要件が設定されました。
追加された要件は4つあり、その一つが「国際的な人権基準に適合し事業を行っていること」です。この要件が満たされていることを確認するための認証・監査制度としてJASTIは策定されました。
JASTIの監査要求事項は全84項目です。カテゴリーは9つあり、強制労働(9項目)▽自動労働(6項目)▽差別・ハラスメント(9項目)▽結社の自由・団体交渉権(2項目)▽労働安全衛生(22項目)▽雇用および福利厚生(15項目)▽賃金(8項目)▽デュー・ディリジェンス(7項目)▽外国人労働者(6項目)となっています。この内容は国際労働機関(ILO)の中核的労働基準を包摂し、繊維業界が最低限遵守すべき事項を網羅しています。
日本繊維産業連盟に設置された統括事務局では制度の全体を管理します。傘下には人権デュー・ディリジェンス推進コンソーシアムと全国社会保険労務士会連合会がそれぞれ事務局を設置、3者が連携してJASTI監査制度を運用します。
検査機関所属の監査員や社労士などが監査員を務め、現地監査を経て監査レポートを作成します。判定はレポート結果を踏まえて行います。
監査要求事項は項目ごとに3段階の重要度が設定されています。監査員は内容に応じて適合・不適合を確認し、適合状況の合計によって「A判定」「B判定」「判定なし」が決まります。特定技能制度の追加要件である「国際的な人権基準への適合」を満たすとされるのはA判定とB判定です。インセンティブとしてA判定の場合は監査更新時期が2年に、B判定の場合は1年となります。初回監査では事業者に取り組みやすい形とし、初回監査と2回目以降監査では異なる判定基準(段階的な基準)を設定しています。
JASTI監査制度の開始に伴い、今年3月に設置された人権デュー・ディリジェンス推進コンソーシアムでは4月1日から、全国社会保険労務士会連合会では4月から社労士による監査の事前コンサルおよび事後のフォローアップの支援を、7月からは監査対応業務を開始する予定です。