能登半島地震の教訓を踏まえ、国土交通省は6月9日、「広域港湾BCP策定ガイドライン(被災地支援輸送編)」を公表しました。同省が広域港湾BCPガイドラインを策定するのはこれが初めて。交通政策審議会は2024年7月の答申において、港湾および広域港湾BCPの策定促進と実効性向上の必要性について言及していました。「港湾の事業継続計画策定ガイドライン」(初版は2015年3月、2021年3月に改訂)については、名称を「港湾BCP策定ガイドライン」として改訂し同日、公表しました。地方港湾を含むすべての港湾において積極的に港湾BCPを策定するよう、文言が盛り込まれました。
能登半島地震では、土砂などを除去して救援ルートを作る、道路の啓開が難航し、港湾が被災地支援において重要な役割を果たしました。一方、能登半島地域において港湾BCPが策定済みだったのは七尾港(重要港湾)のみ、広域港湾BCPにおいても七尾港のみが対象でした。従来、広域港湾BCPは重要港湾以上を対象としてきましたが、能登半島地震の発生によって地方港湾を含む広域的な港湾間連携の必要性が示唆され、ガイドラインでは広域港湾BCPについて「必要に応じ地方港湾等も含めた計画とする」と記されました。
港湾には大きく「被災地支援輸送」と「経済活動維持輸送」の2つの重要な役割があります。今般公表された広域港湾BCPガイドラインは、前者を目的とした計画の策定・見直しを推進するものです。他方、経済活動維持輸送に関する内容は今後追加を検討することとなっています。
被災地支援輸送では、「支援ふ頭」で構成される海上支援ネットワークが想定されています。支援ふ頭とは、「広域支援ふ頭」(一次輸送拠点/支援拠点)と、「地域支援ふ頭」および「連携ふ頭」(二次輸送拠点/受援拠点)に分かれ、広域支援ふ頭は被災地域全体の支援拠点機能を担います。さらに、広域支援ふ頭は、荷捌き施設を整備するなどして受援側に加え支援側の機能を果たすことも想定されています。
現行の広域港湾BCPは17の地方ブロックにおいて策定されています。港湾管理者、地方整備局といった国の機関、自治体、港湾関係者などから構成される広域港湾BCP協議会において策定されています。
改訂版が公表された港湾BCPガイドラインでは、支援物資の輸送といった被災地支援輸送に関する記載が充実するとともに、当該港湾を含む広域港湾BCPが策定されている場合は、広域港湾BCPにて想定された役割分担に応じた対応計画を検討するよう追記されました。