気候変動による大雨を見据えた流域治水に進展、「気候変動適応計画」(令和6年度の施策)フォローアップ報告書を公表 環境省
環境省は7日、政府が策定した「気候変動適応計画」のフォローアップ報告書を公表しました。昨年度に実施した施策のKPI実績値などについて公表しています。
報告書は気候変動適応推進会議が取りまとめました。気候変動適応計画では、適応策(施策)を定め、適応計画に基づく施策の進捗状況をKPIで年度ごとに確認し、同推進会議でフォローアップを行うことと規定されています。
施策は分野別施策と基盤的施策に大別されます。分野別施策に関する42のKPIと、基盤的施策に関する29のKPIについて2023年度の実績値から2024年度の実績値の変化を追いました。
分野別施策においては、前年度と比較が可能な37のKPIのうち、22のKPIで前年度実績からの進展が確認できました。他方、基盤的施策においては29のKPIが前年度と比較可能であり、このうち17のKPIについて実績の進展が確認できました。
進展が堅調なKPIの一例に、「気候変動の影響を考慮した河川整備計画を策定している河川の数」があります。2024年度末時点で28河川に達し、2025年度に約20河川としていた目標を上回るペースで策定が進んでいます。
また、流域治水の推進についてもKPIが設定されており、進展したことがわかりました。気候変動によって降雨量が増加するというシミュレーションがあります。降雨量が増加しても水害を小さくするためには流域治水に取り組むことが有効とされています。
1級水系および2級水系において連携して流域治水プロジェクトを策定している水系を2025年度目標で約550としていましたが、2021年度にほぼ達成し、2024年度末時点では714水系となりました。
流域治水プロジェクトは河川整備などの治水対策に加え、氾濫域も含めて一つの流域と捉えてその流域全体のあらゆる関係者が協働し流域全体で水害を軽減させる取り組みです。従来の治水は、河川や下水道、砂防、海岸などの管理者が主体となってハード対策を進めてきましたが、今後は温暖化が進行した場合に備えて国・都道府県・市町村、企業・住民など流域全体のあらゆる関係者による治水対策が求められています。
流域の関係者が連携して流域治水に取り組む市町村の数を増やすこともKPIに設定されており、2025年度の目標は約900市町村としています。この目標に対して2024年度末では834市町村となり、2023年度末時点と比べて37市町村増えました。
洪水浸水想定区域の指定率は100%で、これを基に作成する洪水ハザードマップの公表率も約99%に達しています。一方、内水浸水想定区域図の作成状況については、既往最大降雨および想定最大規模降雨のいずれの場合でも、作成している団体がまだ少ないのが現状です。想定最大規模降雨による内水浸水想定区域図の作成団体数については、2025年度の目標を約800団体と定めており、2024年度末時点で472団体が作成済みとなり、2023年度末からは243団体増加しました。想定最大規模降雨による内水浸水想定区域図の作成対象団体は、2021年の水防法改正によって改正前の約20団体から約1,100団体へと大幅に拡大されました。
報告書では、こうした水害リスク対策分野のほかに、農林水産業における品種開発(高温耐性品種)といった適応策の進捗がまとめられています。