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日本企業の「稼ぐ力」強化に向け、会社法改正に関する報告書を取りまとめ 経産省

掲載:2025年01月28日

リスクマネジメント速報

         
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経済産業省はこのほど、「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会」で進められてきた議論を踏まえ、会社法改正に関する報告書を取りまとめました。本研究会は、日本企業の「稼ぐ力」の強化に向け、コーポレートガバナンス改革の進め方や会社法改正の方向性について検討するため、2024年9月に立ち上げられたものです。

報告書によると、日本企業の「稼ぐ力」を強化するためには、企業活動基盤である会社法制について、価値創造ストーリーを構築・実行するための選択肢の拡大と、企業と株主の意味あるエンゲージメントの促進に資するような制度の見直しが重要だとされています。

価値創造ストーリーの構築については、今般の改正では、指名委員会などの指名・報酬の最終決定権を、取締役の過半数を社外取締役が占める場合に限り、取締役会に帰属させることについて引き続き方向性を検討するとしました。これは、現行の会社法では、社外取締役が過半数を占める場合でも、指名委員会・報酬委員会の決定を覆すことができない規律になっており、一部の取締役のみが最終決定権を有するという懸念に対する動きと見られます。

価値創造ストーリーの実行には、企業が構築した価値創造ストーリーや成長戦略の実行を可能にするソフトインフラの整備が必要だと述べました。具体的な手段としては、従業員や子会社の役職員に対しても株式の無償交付を可能にすることによる「人的投資の促進」、上場企業間の買収に係る手続きの簡易化による「大規模な成長促進」、経営者による責任限定契約の締結を可能にする「経営者の大胆なリスクテイク促進」などを検討するとされています。

企業と株主のエンゲージメントにおいては、対話の実質化・効率化のため、企業からの必要かつ十分な情報開示と、非効率の解消が要点だとしました。具体的には、企業が実質株主の情報取得を可能にする開示請求権制度の創設や、株主総会のバーチャル化・効率化により、建設的な対話と人材・時間の有効活用を可能にすることなどを検討すると記載されています。

最後に、日本企業は「稼ぐ力」を強化するために必要なコーポレートガバナンス体制の実現に向け、常に変革を行っていく必要があるとしました。本報告書でまとめられた事項について早期に見直しを図り、今後も更なる検討が期待されると述べています。