内閣府は3月31日、「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書」および「南海トラフ巨大地震モデル・被害想定手法検討会 地震モデル報告書」を公表しました。
有識者から成る「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」では、「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」の策定(2014年)から10年が経過することから、基本計画の見直しに向けて検討を実施してきました。
その検討結果として公表された「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書」では、想定最大規模の被害想定として、死者数は最大で約29.8万人(災害関連死者数は含まない)と推計しています。また、建物の被害としては、全壊消失棟数が推計235万棟となっています。また、経済被害では、資産などへの被害は約224.9兆円、経済活動への影響は約45.4兆円と推定されています。
また、過去の南海トラフの地震では、時間差をおいてマグニチュード8クラスの地震が発生した事例があることから、時間差のある地震の被害想定も算出。例えば、先発地震による建物損傷が修繕されないまま後発地震が発生すると、揺れによる全壊棟数は、単独して発生する場合の全壊棟数より約3.1万棟増加する推定となっています(先発地震が東半割れ、後発地震が西半割れで、冬・夕方、風速8m/sの場合)。こうした例から、先発地震発生後の対応が重要であることを示唆しています。
上記の推計結果をふまえ、実施すべき主な対策として主に5点を挙げています(①社会全体での防災意識の醸成②強靱化・耐震化、早期復旧の推進③被災者の生活環境整備④防災DX、応援体制の充実などによる災害対応の効率化・高度化⑤時間差をおいて発生する地震などへの対応の強化)。④については、新総合防災情報システム(SOBO-WEB)や物資調達・輸送調整等支援システムの機能強化などが例示されています。⑤については、南海トラフ地震臨時情報の実効性向上や周知、そしてモニタリングに必要な観測網の維持・強化を具体策として掲げています。
さらに、防災対策を推進した場合に見込まれる被害軽減効果を試算した上で、対策に取り組めば被害は軽減できることも示しています。例えば津波被害に関する試算結果によると、早期避難意識が低い場合の死者数は約21.5万人となりますが、全員が発災後10分で避難を開始した場合、死者数は7割減の約7.3万人になると推定されています。
なお、「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書」で示されている推計は、同日に発表された「南海トラフ巨大地震モデル・被害想定手法検討会 地震モデル報告書」にある被害想定手法に基づいています。調査・研究に基づく最新知見などをふまえ、津波高や震度の推計における手法を見直したものです。