法務省と文部科学省はこのほど、令和7年版の人権教育・啓発白書を公表しました。人権教育・啓発白書は、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」に基づく年次報告となっており、政府が令和6年度に実施した人権教育と人権啓発に関する施策について取りまとめています。
令和6年度の人権課題については、昨年に引き続きインターネット上の人権侵害とこどもの人権問題が明記されたほか、旧優生保護法に関する障害のある人の人権問題に関心が寄せられたとしています。
法務省の人権擁護機関が令和6年に救済手続きを開始した人権侵犯事件は8,947件となり、類型別では、労働権関係事案が1,663件(18.6%)、プライバシー関係事案が1,437件(16.1%)、学校におけるいじめ事案が1,202件(13.4%)、暴行・虐待事案が1,025件(11.5%)、差別待遇事案が907件(10.1%)となったことが明らかとなりました。
また、日本が抱える現代的な課題を以下の7つのトピックスとして掲載しました。
- 「人権教育アーカイブ」の開設(令和7年3月)
- 困難な問題を抱える女性への支援
- 父母の離婚等に直面する子の利益を確保する観点からの親権・監護権に関する規律の見直し等について
- 新しい認知症観と地域での様々な取り組み
- 誹謗中傷等のインターネット上の違法・有害情報に対処するための取り組み
- 「ビジネスと人権」に関する我が国の取り組み
- 職場におけるハラスメント防止対策の推進
ビジネスと人権に関しては、近年、グローバル化が進むことで企業に対する人権尊重を求める意識が高まっているとして、政府は人権デュー・ディリジェンス(企業活動における人権への影響の特定、予防・軽減、対処、情報提供を行うこと)の導入を推奨、取り組みを支援していることを強調しました。
その取り組みの一環として、中小企業に導入を促す目的で作成された「『ビジネスと人権』ファーストステップ~中小企業向け取組事例集~」や、企業が研修を実施するための啓発資料「今企業に求められる『ビジネスと人権』への対応」などを法務省のWebサイトに掲載し、活用を促しています。
職場におけるハラスメント防止対策においては、令和6年度にカスタマーハラスメント対策について業界共通の対応方針などを策定し、発信を支援するモデル事業を厚生労働省が実施したことに触れ、令和7年3月にはカスタマーハラスメント対策を事業主の措置義務とすることなどを含む改正法を提出、成立しました。