法務省と文部科学省はこのほど、「人権教育・啓発に関する基本計画(第二次)」が策定されたことを発表しました。
「人権教育・啓発に関する基本計画」とは、人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るためのものです。2002年に第一次計画が策定された後、人権をとりまく社会経済情勢や、国際的な潮流にさまざまな変化が生じたことをふまえ、このたび第二次計画が策定されました。第一次計画からの主な変更点は、次の通りです。
まず、企業に対して人権尊重に向けた取り組みを求める「ビジネスと人権」への国際的な要請が高まっていることが解説されています。こうした流れを受け、第二次計画では、各種人権課題の解決に向けて人権教育・啓発に関する施策のさらなる推進を図ることとしています。また、業種や企業規模、職種を問わず企業に人権尊重の責任があることから、幹部などへの人権研修が広く行われるよう支援することも求められると記されています。
また、ヘイトスピーチに関する項目も加わりました。法務省では、どのような言動がヘイトスピーチに該当し得るかについて情報提供・共有を行うことの重要性に留意しつつ、ヘイトスピーチはあってはならないことの理解を促進するための人権啓発活動を推進するとしています。文部科学省は、ヘイトスピーチの解消に向けた人権教育を実施するにあたり、指導方法の在り方などに関する調査研究・普及を行うとともに、都道府県教育委員会の人権教育担当者や教員、社会教育担当者などへの研修・会議も行いながら、地域や学校における取り組みを推進することとなっています。
さらに、性的マイノリティに関して、内閣府や総務省、文部科学省などにおいて、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」の趣旨などを普及・啓発する計画が記載されています。また厚生労働省では、性的マイノリティであるなどの不合理な理由で就職の機会が制限されることを防ぐため、適性と能力に基づいた公正な採用選考システムの確立が図られる取り組みを推進するとしています。
そして、第一次計画で「感染症の患者等」の項目内で説明されていた、ハンセン病の患者・元患者の人権に関する計画が、今回の第二次計画では独立した項目として整理されました。また、ハンセン病の患者や元患者だけでなく、その家族に対する偏見・差別の解消に向けた計画も加わりました。
このほか、個別の人権問題を横断して関係する、インターネット上の人権侵害が深刻化していることから、インターネットリテラシーの向上を図る啓発活動なども推進されます。
「人権教育・啓発に関する基本計画(第二次)」の全文は、法務省のホームページに掲載されています。