東京都は9月24日、「東京都地下空間浸水対策ガイドライン」を17年ぶりに改定しました。
都はこれまで、「東京都地下空間浸水対策ガイドライン(2008年9月)」により、地下街などの地下空間の安全確保に対して指針を示し、浸水対策を進めてきました。今回の改定は、気候変動および下水道整備など、地下空間を取り巻く環境の変化に対応したものとなっています。
都内には現在、地下空間が約7万2,000カ所あります。このうち、大規模地下街が8カ所あり、その延床面積は東京ドーム約5個分の面積に相当するとしています。地下鉄駅は約280カ所あり、1日の利用者数は900万人を超え年々増加しています。本ガイドラインは、これら地下施設(地下街・地下通路・鉄道)の管理者や地下階を有する住宅の個人所有者、自治体に対して防災対策強化に取り組むよう促しています。
ガイドラインにより対象となる災害は、豪雨による河川からの氾濫(外水氾濫)および下水道からの氾濫(内水氾濫)のほか、台風や低気圧などに起因する高潮による浸水被害です。気候変動に伴い、近年の豪雨は激甚化・頻発化しており、浸水被害の発生が懸念されています。
都は、このような浸水の危機に備えるには、タイムラインの整備が重要だと訴えています。タイムラインとは、発災前から発災後までの時間軸別に役割分担とそれぞれの行動計画を記したもので、台風、前線、線状降水帯、局地的大雨など種類ごとの事前策定を求めています。
また、今回の改定で新たに盛り込まれたのは、ICTやAIの技術を活用した取り組みです。将来、これらの技術を活用した場合の、基礎データ収集から避難情報発信までの一連の流れを示す災害対応フローが提示されました。
将来的には、蓄積した過去の被災実績や気象情報、周辺地形データなどをもとに、リアルタイムで収集した浸水状況や滞在者数などのデータをAIにより解析。その解析結果を参考に、地下街管理者が行う避難経路の選定やアラート発信のタイミングを支援することが期待できるとしています。都は、このような技術の活用により、地下空間の管理者がこれまで以上に迅速かつ安全な避難誘導が可能となるように支援し、浸水被害の軽減につなげていきたいとしています。