インターネット上の仮想博物館「消防防災博物館」を運営する消防防災科学センターは2月、消防防災関係者向けのウェブコンテンツ「地域防災データ総覧」に「令和6年能登半島地震編」を追加し公開しました。学識経験者や官庁、地方公共団体、法人団体の職員による寄稿文がとりまとめられているほか、同センターによる現地調査の概要や上席主任研究員によるヒアリング調査結果も収録されています。
「令和6年能登半島地震編」は発災初期および応急期における被災地の対応活動や、現場で得られた教訓などを紹介しています。災害対応の最前線に立たされた市町村職員をはじめ国や地方公共団体および法人団体の職員などが発災初期にとった行動および対応を多くの人が知ることで、今後の災害対応につながるとしています。
学識経験者の寄稿文は第Ⅰ部「総論」に、官庁、地方公共団体、法人団体の職員による寄稿文は第Ⅱ部「初動~応急期における被災自治体支援」に掲載されています。
第Ⅰ部「総論」では、災害対応の課題と、今後の防災対策の展開に役立つ知見について教授陣が執筆しています。名古屋大学名誉教授で「あいち・なごや強靱化共創センター」のセンター長も務める福和伸夫氏を筆頭に、神戸大学の室﨑益輝名誉教授、富山大学都市デザイン学部の井ノ口宗成准教授、大正大学の岡山朋子教授が寄稿しています。
能登半島地震では、半島という特性や能登地方が過疎化地域であること、そのほかさまざまな要因が重なって多数の集落が一時、孤立しました。福和氏は「能登半島地震から考える今後の大規模地震対策」と題した寄稿文で「南海トラフ地震の被災地には、奥能登と同様の孤立可能性が高い過疎地が多数存在する」と指摘、孤立しがちな過疎地こそ住家の耐震化が重要であることや、孤立が予想される地域では震災前に公費を投入して集落の自立化を進めることが事前対策になるとしています。また、デジタルに依存した社会インフラなどを踏まえ、デジタル喪失に備えたシステムの多重化と喪失時のアナログ対応について備えておくよう、提案しています。
第Ⅱ部「初動~応急期における被災自治体支援」では、被災地における初動対応や、被害認定調査、避難所運営、各種の災害対応業務の実例などについて国(官庁)、地方公共団体、法人団体の3つの視点から寄稿文が掲載されています。
消防防災科学センターによる現地調査の内容は巻末に参考資料として収録されています。それによると、同センターは昨年1月5~6日と2月8~9日の2回に分けて計3班を編成して被害状況などを調査しました。発災直後の被害や災害対応について概要が写真とともに記されています。また、昨年11月には珠洲市職員に対して発災初期の対応に関するヒアリング調査も実施、発災直後からの現場対応がまとめられています。