厚生労働省はこのほど、令和7年版厚生労働白書を公表しました。白書は、社会保障と労働施策の役割や知る意義などについてまとめた第1部と、同省が現在取り組んでいる政策課題への対応をまとめた第2部で構成されています。
第1部の「次世代の主役となる若者の皆さんへ」には、高校生、大学生、社会人になったばかりの若者へ向けたメッセージが掲載されており、若者世代が社会保障や労働施策について知ることができるよう、教育現場や職場などで本書を周知・活用するよう求めています。
白書では、社会保障や労働施策は、「個人の力だけで全て備えることが難しい課題や、リスクなどに対して、社会全体での支え合いの仕組みやルールを作ることによって、個人の幸福を増進するために存在する」としており、社会保障の所得の再分配機能により、格差の固定化を防ぎ、貧困の連鎖を断ち切る役割を果たすと強調しています。
日本が迎えている「人口減少・少子高齢社会」で懸念されているのが若者世代における格差拡大であり、その対策の一つとして、人々を制度の中に包摂し、世代を超えた全ての人たちが連帯し協力し合うことが重要であると訴えています。具体的には、社会保障を支えるのは若い世代で高齢者は支えられる世代、という固定観念を払拭し、「全ての世代で社会保障を支え、社会保障は全ての世代を支える」という共通認識のもと、制度の見直しをする必要があるとしています。
そのために重要となるのが若者世代の当事者意識であり、社会保障においては給付と負担の構造を含めその意義を理解すること、労働施策においては、労働者の権利と義務を学ぶことで、困難な状況に直面した際に適切な支援を受けられるといった知識を得る学校教育の取り組みについてもまとめています。
第2部では、最低賃金引き上げの機運醸成を図る取り組みを記したほか、同省が2025年度予算で「賃上げ」支援助成金パッケージをとりまとめ、中小企業や小規模事業者が賃上げしやすいように助成金による支援を行っていることを明記しました。
また、子育てなどをしながら働き続けることができる環境整備として、「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第47号)により、「出生後休業支援給付」(2025年4月施行)などを創設したとしています。「出生後休業支援給付」は雇用保険制度の一つで、子どもの出生後一定期間内に両親ともに育児休業を取得した場合、すでにある育児休業給付と合わせて休業開始前賃金の手取り10割相当が支給されます。