内閣府は3月28日、「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」を公表しました。
このガイドラインは、有識者から成る「首都圏における広域降灰対策検討会」での成果をふまえて作成されました。国や地方公共団体、関係機関が各地域における降灰対策を講じる上で参考になるよう、基本的な考え方や留意点がまとまっています。富士山の大規模噴火で降灰の影響のみが想定される、首都圏のような火山から遠い地域における対策を想定したガイドラインとなっています。ただし、火山周辺の火山災害警戒地域や、富士山以外の火山での広域降灰対策においても活用することができます。
ガイドラインでは、降灰被害の様相を4つのステージで区分しています(ステージ1:降灰量微量以上3cm未満▽ステージ2:降灰量3cm以上30cm未満で被害が比較的小さい▽ステージ3:降灰量3cm以上30cm未満で被害が比較的大きい▽ステージ4:降灰量30cm以上、降灰後土石流の危険がある)。
ステージ1~3ではできる限り降灰域内に留まり、自宅などで生活を継続することを基本方針としています(ただし、ステージ3は状況に応じて生活可能な地域への移動も視野に入れることになります)。ステージ4の場合は、噴火直後は自宅や堅牢な建物に避難し、降灰状況をふまえて域外へ避難する原則が示されています。この時、国や地方公共団体、関係機関は、救助・避難のルートを確保することになります。
また、ガイドラインでは輸送や移動手段、ライフラインなどの分野における降灰被害の影響も想定されています。例えば鉄道では、微量の降灰で地上路線の運行が停止し、停電状況などによっては地下路線も運行が停止すると記されています。道路では、乾燥時10cm以上、降雨時3cm以上の降灰で二輪駆動車が通行不能となると書かれています。建物に関しては、降灰量が降雨時30cm以上になると、木造家屋が火山灰の重みで倒壊する恐れがあるとしています。
留意点としては、平時から備えることの重要性が記載されています。住民は、自宅などでの生活を継続するために十分な備蓄を用意する必要があります。また、国や地方公共団体、関連機関などにおいては、資機材・対策用品の備蓄や訓練が必要となります。また、降灰発生時は降灰状況に応じて対応することになるため、実測の降灰量だけでなく、降灰予測も活用することで早めに対応することが可能になると記されています。
なお、火山灰の処理に関して、施設管理者や地方公共団体は国と連携しながら、事前に仮置場や最終的な処分の候補地を選定しておくなど、準備をすることが望ましいとしています。なぜなら、火山灰の処理には検討事項がさまざまあるためです。例えば降灰時は、火山灰が堆積した場所に応じて施設管理者(宅地から排出された火山灰の場合は市町村)などが火山灰を収集・運搬し、最終的に処分することになりますが、敷地内で処分場所や仮置場を確保することが難しい場合は、敷地外に確保する必要もあるなど、さまざまな対応が必要になります。また、仮置が長期に及ぶ可能性もあります。
「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」は今後も、知見の蓄積や社会構造などの変化などに応じて充実化が図られる予定となっています。