噴火警戒レベル
掲載:2022年01月21日
改訂:2024年03月21日
用語集
噴火警戒レベルは、活火山の状況に応じて「警戒が必要な範囲」と近隣住民らの「とるべき防災対応」を5段階に区分して発表する指標です。噴火警報などに付して発表されたり、避難指示や入山規制を発令する目安になったりするもので、国内49の火山で運用されています(2024年3月時点)。本稿では噴火警戒レベルについて、具体的な運用や活用例などをご紹介します。
噴火警戒レベルの運用と判定基準
災害大国と言われる日本ですが、火山に関しても例外ではありません。日本国内には100を超える活火山が存在し、これは世界全体の約7%に相当します。国内の活火山のうち、特に注意が必要な50火山は「火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山」に指定され、24時間体制で監視・観測されています。噴火警戒レベルは、この50火山のうち49火山で運用されているものです。
噴火警戒レベルはレベル1からレベル5の5段階に区分されており、レベル5が「避難」、レベル4は「高齢者等避難」など、各レベルが分かりやすいキーワードと紐づいています。詳細は下図の通りです。
なお、噴火警戒レベルの判定基準は各火山によって異なります。2021年6月に噴火警戒レベル3(入山規制)を発表した諏訪之瀬島では「御岳火口中心から1km付近まで飛散する大きな噴石を48時間に複数回観測」をレベル3への引き上げ基準の一つとしており、これが満たされたためレベル3を発表しました。また、富士山のように「火山活動活発化の過程でレベル2は発表しない」といった独自の運用をしている火山もあります。
噴火警戒レベルの活用例
噴火警戒レベルはどのように活用されているか、具体例を見てみましょう。
①「噴火警報」「噴火予報」に付して発表される
噴火警戒レベルを運用している火山では、気象庁の「噴火警報」「噴火予報」に噴火警戒レベルも付して発表されます。先述の通り、噴火警戒レベルはレベル5で「避難」、レベル4で「高齢者等避難」など具体的な避難行動を示すキーワードと紐づいているため、警報や予報の受け手が「今どのくらい危険なのか」を直感的に理解しやすいという利点があります。
コラム:噴火警報と噴火予報
噴火警報は、火砕流など生命に危険を及ぼす火山現象の発生が予想される場合や、危険が及ぶ範囲の拡大が予想される場合に気象庁が発表します。発表に当たっては「警戒が必要な範囲」(生命に危険を及ぼす範囲)が明示され、その範囲が火口周辺に限られる場合は「噴火警報(火口周辺)」または「火口周辺警報」、人の居住地域まで及ぶ場合は「噴火警報(居住地域)」または「噴火警報」となります。「噴火警報(居住地域)」は特別警報に位置付けられています。一方、噴火予報は火山活動が静穏である場合や、噴火警報には及ばない場合に発表されます。
②避難指示や入山規制などの指標になる
噴火警戒レベルや噴火警報は、自治体が入山規制や避難指示などの防災対応を行う指標になります。各火山の地元自治体には、自治体や関係当局、専門家などから成る「火山防災協議会」が設置されています。火山防災協議会では平時のうちから避難開始時期や避難対象地域についてあらかじめ検討しており、噴火警戒レベルや噴火警報が発表された際には、それに基づき速やかな防災対応が行われることになっています。
③避難計画などと一体的に運用される
噴火警戒レベルは地元自治体の地域防災計画や避難計画の中に組み込まれ、一体的に運用されます。
噴火警戒レベルの歴史
噴火警戒レベルは、それまでの「火山活動度レベル」に代わって2007年に運用が始まりました。前身である火山活動度レベル(0~5の6段階)も噴火警戒レベルと同様に火山情報に付して発表されるものでしたが、噴火の規模など火山の状況を伝えることに重点を置いていました。このため、住民らが「今何をすべきなのか」を理解しにくいという課題があり、火山の状況を具体的な避難行動と結び付けた現在の噴火警戒レベルにリニューアルされた経緯があります。
また、各レベルのキーワードなどは随時見直されています。例えば、2015年まではレベル1のキーワードは「平常」でしたが、活火山であることに理解を促すため「活火山に留意」に変更されました。2021年には改正災害対策基本法との整合のため、レベル4のキーワードが「避難準備」から「高齢者等避難」になっています。
おわりに
噴火は地震などに比べると事前の注意喚起がしやすいと言われますが、急激な変化の際には警戒レベルの引き上げが間に合わないこともあります。2014年に大規模噴火によって58人の死者を出した御嶽山も噴火警戒レベルは1のままでしたが、噴火前には小規模な火山性地震が頻発し、地元のニュースでも報じられていました。活火山の近くにいる時は噴火警戒レベルが低くても安心せず、意識的に情報収集するなどの備えが必要になります。
おすすめ記事
- なぜ企業は噴火に備えなければいけないのか
- 富士山ハザードマップの改定ポイントと企業に求められる対応
- 地域防災計画
- 噴火レベル4のキーワードを「避難準備」から「高齢者等避難」に変更へ 気象庁
- 噴火警戒レベル、富士山の判定基準表を公表 気象庁
- 大規模噴火による首都圏への被害想定を公表 中央防災会議
- 降灰予報
- 火山災害
- 巻頭特集は火山防災と能登半島地震、令和6年度版「防災白書」を公表 内閣府
- 「首都圏における広域降灰対策検討会」を開催、年度内のガイドライン策定を目指す 内閣府
- 火山に関する総合基本施策の立案と調査観測計画の策定に向け、要点をまとめる 火山本部
- およそ15%はオールハザード型BCPを策定、会員企業向けの調査結果を公表 東商
- 火山灰の処理やライフラインなど4つのテーマで議論、「首都圏における広域降灰対策検討会」第2回を開催 内閣府