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火山災害

掲載:2024年04月22日

用語集

火山災害とは、火山活動により引き起こされる火山現象が原因で、生命や財産が脅かされる災害のことを指します。火山災害は、火山活動が活発になるほど被害面積は拡大し、立ち入り規制や避難生活が長引くことになります。

2024年4月1日には「活動火山対策特別措置法の一部を改正する法律」が施行され、火山活動に対する意識と理解を深めるため、8月26日が「火山防災の日」と制定されました。今後、火山防災に向けて防災訓練や講演会などが実施され、企業としてどのように備えるべきか検討する機会も増えることでしょう。この記事では、火山災害をもたらす火山現象の種類や火山災害の対策について解説します。

火山災害の原因となる火山現象の種類

火山災害は火山現象の種類により、影響範囲や被害の特徴が異なります。ここでは、火山現象の種類とどのような被害が想定されるのかを説明します。

大きな噴石
大きな噴石とは、火山噴火によって吹き飛ばされる岩のかたまりのうち、約20~30cm以上を指します。被害範囲は火口周辺の2~4kmとされていますが、避難までの時間的余裕がほとんどなく、生命への危険性が高いとされています。風の影響をほとんど受けず、火口から弾道を描いて飛ぶとされ、建物の屋根を突き破ることもあります。
溶岩流(ようがんりゅう)
溶岩流は、溶岩(マグマ)が火口から噴き出し地表を流れ下る現象です。流れるスピードは比較的遅いとされ、場合によっては歩いて避難することが可能ですが、溶岩流は高温で触れた草木や、建物、道路、農耕地、森林などを焼き尽くします。
火山灰(降灰)、小さな噴石
火山灰は、火山噴火によって火口から噴出する直径2mm未満の小さな固形物を指します。火口より数十kmから数百km以上の広範囲に風に流されて降り積もることもあり、農作物や道路、鉄道や航空など、日常生活へ与える影響が大きいとされます。小さな噴石は直径2mm以上の小さな固形物を指し(※)、噴火してから落下するまでにかかる時間は数分から十数分です。
降灰予報では直径1cm以上と定義されています。
火砕流(かさいりゅう)
火砕流は、高温の火山灰や岩石が空気や水蒸気と一体となり山の斜面を流れ下る現象です。大きな噴煙や溶岩ドームが崩れることなどで発生します。火砕流の流れ下るスピードは急速で、流下スピードは時速数十kmから数百km、温度は数百度に達します。火砕流が通過した場所は焼失するとされ、破壊力が大きいため噴火警報などを活用し、事前に避難をすることが必要です。
火山ガス
火山ガスは、火山活動により地表に噴出したガスで、二酸化硫黄や硫化水素、二酸化炭素などを含み、吸引すると気管支障害や硫化水素による中毒など、人体に影響を及ぼします。気象庁では、居住地域に長期間影響するような多量の火山ガスが発生し、火山ガスの濃度が高まる可能性がある地域に「火山ガス予報」を発表します。
火山泥流(かざんでいりゅう)、土石流
火山泥流とは、火山噴火で噴出した火山灰や岩石に、大量の水が混ざって地表へ流れる現象です。噴火警報などでは、降雨による火山泥流を「土石流」と呼びます。
流れるスピードは時速数十kmに達することがあり、下流の家屋を流すなど大きな被害をもたらすとされています。火山灰の堆積がある場所では、少ない降雨でも発生する可能性があります。
融雪型火山泥流
融雪型火山泥流とは、積雪がある火山で噴火が発生した際に、噴火による熱で雪が融かされ大量の水となり、火山噴出物を巻き込みながら時速数十kmにおよぶスピードで流れ落ちる現象です。谷筋などを遠方まで流れる可能性があるため、積雪時に火山噴火が発生した場合は発生を確認する前に事前避難しましょう。
津波
火山噴火で山間部が崩落することにより火砕流や土石流、火山泥流などが発生し、海に流入することで津波が発生する可能性があります。また、海底火山で大きな噴火が発生した場合はそれにともない津波が発生するとされます。

火山災害の対策

日本の活火山は111で、そのうち「噴火警戒レベル」が運用されている火山は49です。
内閣府では、火山対策として警戒避難対策、農林漁業被害対策、降灰対策、泥流や土石流対策を実施しており、火山災害警戒地域を令和3年5月31日に更新しました。

企業として火山災害に備えるためには、はじめに近隣に噴火警戒レベルが運用されている活火山があるかどうかを確認しましょう。近隣に噴火警戒レベルが運用されている活火山がなくとも、火山災害の一種である「降灰」は広範囲に影響を及ぼします。「噴火警戒レベル」や「降灰予報」を正しく知り、どの火山災害が自社に影響を及ぼす可能性があるのかを確認することが重要です。

さらに、火山活動が活発化した場合に発生する火山災害は一種類とは限りません。マグマや火山ガスにより地震が誘発される可能性もあります。自社でBCPを策定している場合は、複合災害に対応したものか、適切な内容・頻度で訓練を実施しているか、形骸化していないかを定期的に確認しましょう。

また、火山活動の状況や地域によって求められる対応が公表されている場合があります。地域の防災機関や、気象庁、内閣府の防災ページから最新情報を定期的に確認しましょう。

これらのほかにも、火山災害で企業が備える対応、企業に求められる対応は以下のコラムで詳しくご紹介しています。

▼コラム:なぜ企業は噴火に備えなければいけないのか
火山噴火にどの程度のリスクがあるのか、企業活動にどのような被害をもたらすか、企業が備えるべきポイントを解説しています。

▼コラム:富士山ハザードマップの改定ポイントと企業に求められる対応
2021年3月に改定した「富士山ハザードマップ」を踏まえ、富士山ハザードマップの概要と改定ポイント、大規模噴火に備えたBCPの考慮ポイントを解説しています。

火山災害は地震や水害よりも発生頻度が低く、日本においては、平成26年9月27日の御嶽山噴火以降、10人以上の死者が出た火山災害はありません。(令和6年4月10日時点)そのことから対策が後手に回ることもあるでしょう。火山災害を知ることで、BCPの改善や複合災害対応を考えるきっかけとなれば幸いです。

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