東京商工会議所(東商)は18日、東商会員企業を対象とした災害・リスク対策に関する調査結果を公表しました。BCP策定企業は増加傾向にあるものの、東京都の帰宅困難者対策条例を内容も含めて把握している企業は3割程度、従業員向けに3日分以上の飲料水・食料を備蓄している企業は約5割程度となっていることなどがわかりました。
調査は今年5月12~30日にかけて東商会員の18,252企業を対象に実施。回答件数は1,352件(回答率は7.4%)で、回答企業の約3割が大企業、約7割は中小企業となりました。
公表された調査結果「会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート2025年調査結果」によると、BCP策定率はゆるやかに上昇し39.5%(前年調査比4.3ポイント増)となりました。BCP策定率を規模別でみると、大企業は63.0%、中小企業は28.0%でした。
BCP策定済み企業(528社)に対して、BCPで想定しているリスクを複数回答可で尋ねたところ、地震(93.0%)▽水害(61.2%)▽感染症(58.7%)▽情報セキュリティ(44.1%)▽火山噴火(20.5%)―の順となりました。リスクごとのBCPではなく、オールハザード型BCPを策定している企業を想定した選択肢も設け、オールハザード型と回答した企業の割合は13.1%でした。
調査では、備えが必要だと感じるリスクについても複数回答可で尋ねています。すると、第1位は地震(97.5%)となりましたが、第2位は感染症(80.7%)、第3位は情報セキュリティ(80.3%)でした。情報セキュリティについて備えの必要性は感じているものの、BCPには反映できていない企業が多いとみられます。
東京都には帰宅困難者対策条例が制定されています(2013年4月施行)。この条例では、一斉帰宅抑制や3日分の飲料水や食料などの備蓄を事業者の努力義務としています。しかし、努力義務の内容を含めて条例を把握している企業は33.1%に留まりました。規模別でみると、従業員数が多い企業ほど条例を把握している傾向にありますが、301人以上2,000人以下の企業においても、努力義務まで把握しているのは56.5%でした。
備蓄体制は3日分以上の飲料水・食料を従業員向けに備蓄している企業は約5割、外部の帰宅困難者向けに備蓄している企業は2割未満でした。従業員向けの災害用トイレについては、3日分以上を備蓄している企業は34.7%、1~2日分を備蓄している企業は28.9%でした。
企業が備蓄で負担に感じているのは、費用よりも保管スペースや管理ということもわかりました。備蓄する上での負担を複数回答可で尋ねたところ、最も多かったのは「保管スペースの確保」で7割、次いで在庫管理や賞味期限管理などの「備蓄品の管理」が6割となり、「備蓄品の購入・買替費用の確保」(5割未満)を上回りました。特に「保管スペースの確保」は、企業の規模を問わず、最多の回答となりました。
このほか、回答企業からは、サイバー攻撃や複合災害を含めた訓練シナリオの多様化が必要だとする声や、富士山噴火に対するBCPの検討が不十分なままだとする声などが寄せられました。