東京商工会議所(以下、東商)はこのほど、「東京都の災害・リスク対策に関する要望」を災害・リスク対策委員会において取りまとめ、公表しました。
近年、事業者を取り巻くリスクが多様化・複合化しており、自然災害だけでなく、サイバー攻撃や感染症、紛争などに備えた、事業継続を維持する取り組みが不可欠であるとしています。特に東京は人口や産業が密集しているため、その特性を踏まえた上で住民や事業者の安全を確保できる都市の強靭化が必要であるとして、以下の4つの重点項目を東京都に要望しました。
- 自助・共助の力を高めるための支援強化
- 都市インフラの老朽化対策
- 新たな被害想定を踏まえた首都直下地震対策
- 頻発化・激甚化する風水害に備えた対策
自助・共助の強化を求める背景として、阪神・淡路大震災では公助による救助割合がわずか1.7%であったことを取り上げ、住民や事業者が「自らの命は自らが守る」「身近な人々と協力して助け合う」という意識を醸成することが必要であると訴えています。
東商会員企業を対象としたBCP(事業継続計画)の策定率は、大企業が63.0%、中小企業は28.0%にとどまっており、BCPの課題について「人員に余裕がない」「具体的な対策方法がわからない」という声が多数だったため、都による公的支援が必要であるとしています。
なお、地震・風水害・感染症などの事象別に方策を整理した従来のBCP策定は、訓練や計画見直しに時間を要するなどの課題が多いという指摘があるため、経営資源の毀損を前提に対策を講じるオールハザード型BCPへの転換を促進するよう求めています。
都市インフラの老朽化に関しては、2025年1月に発生した八潮市の道路陥没事故に言及し、今後50年が経過するインフラの割合が加速度的に増加するとして、インフラの現状把握やリスク評価、修繕に要する費用の精査について迅速な取り組みが必要であるとしました。
今後30年以内に発生する確率が70%と予想されている首都直下地震については、東京都が公表している被害想定(冬・夕方)を軸とした対策強化を求めています。被害想定では、人的・建物被害のほか、インフラの損傷や電力・ライフライン停止などの大規模な被害が想定されています。約453万人が見込まれる帰宅困難者に関しては、民間一時滞在施設に対する支援の拡充や対策の推進などを求めました。さらに、電力の確保推進、通信ネットワークの整備や無電柱化なども挙げています。
頻発化・激甚化する風水害に備える対策としては、海抜ゼロメートル地帯をはじめとする地域に、高層の建物や避難スペースの整備、高規格堤防などを組み合わせた高台まちづくりを、国・都の連携により推進していくことが重要であると述べています。
このほか、継続要望としてレジリエントなまちづくりや迅速な復旧体制の整備、災害・リスクへの社会的意識の向上などを引き続き求めるとしています。