
「レピュテーションリスク」とは企業や製品、従業員に関して、ネガティブな評判や噂が拡散されることにより、企業評価が低下し、企業経営にダメージが及ぶ危険性のことです。インターネットやSNSの普及により、従来マスメディアでは報道されなかった不祥事やスキャンダルでも、瞬時に世間に広まる可能性があります。このようなレピュテーションリスクは、企業やブランドの信用失墜や価値の低下を招くリスクであり、企業の存続が危ぶまれるほどの被害も実際に発生しています。
レピュテーションリスクが増大した背景
レピュテーション(reputation)は英語で「評判」や「世評」などの意味があります。近年、企業の評判は様々な側面から影響を受けています。財務的な指標だけではなく、ESGをはじめとする多様な指標や従来の企業の社会的責任を超えた人権問題への対応も求められるようになっています。また、SNSを通じて個人の情報発信が容易になったこともレピュテーションリスクの増大につながっています。
レピュテーションリスクの原因と損失
近年、レピュテーションリスクの原因として目立つのは、組織風土やコンプライアンス、人権などに関するものです。
特に、企業のコンプライアンス違反は、企業イメージを大きく低下させます。具体的には、顧客情報の流出や従業員の過労死、ハラスメントやそれらに対する事後対応の問題などが挙げられます。
さらに、風評が広まることもレピュテーションリスクです。根拠の不確かな噂やデマが広がり、企業や商品のイメージが悪くなることがあります。消費者だけでなく従業員が悪質なコメントを発信し、誤った情報が流布することもあります。以前は「バイトテロ」と呼ばれる、従業員の不適切な行為が要因となる事案も多数発生しました。
こうした事案が刑事罰や業務・免許の停止といった行政処分の対象にまで発展すると、損失はさらに甚大なものになります。売上低迷、信頼回復のための広告費などのコストの増加に加え、優秀な人材の流出や採用活動への支障など、人的リソースにも悪影響を及ぼします。
レピュテーションリスクの対策
レピュテーションリスクに対応するには、以下のような取り組みをしておく必要があります。
従業員の教育
従業員によるレピュテーションリスクを防止するため、定期的な研修や教育は有効です。リスクマネジメントに関する専門部署だけでなく、全社的にリスクについて考える機会を提供することが効果的です。
コンプライアンスの徹底
レピュテーションリスクは、情報流出や従業員の不適切な対応など組織内部のリスクによって引き起こされる場合があります。また、近年の事例で顕著なように、様々な取り組みを行っていても企業の基盤となる組織風土が不健全である場合や現場社員のコンプライアンス意識が低い場合には、大きなリスクになります。そのため、組織内部でコンプライアンス意識向上のための教育や風通しの良い組織風土を根付かせることが重要です。
商品やサービス品質の維持・向上
根拠の不確かな風評のリスクを避けるためには、常に品質の高い商品やサービスを提供することが欠かせません。逆に、品質問題や認証不正は、企業への信頼の失墜につながります。
リスクコミュニケーションの強化
根拠の不確かな情報やデマによるレピュテーションリスクを防止するためには、日常的な広報活動で正しい情報を発信することが有用です。さらに、ステークホルダーとの定期的な対話もリスク低減に寄与します。
監視体制の見直し
一度噂が拡散してしまうと、収束が非常に困難になるため、あらかじめ監視体制を構築しておくことが重要です。モニタリングを通して、事態が深刻化する前に検知することで、対応をスムーズに進めることが可能です。
危機対応トレーニングの実施
レピュテーションリスクの完全な回避には限界があるため、経営陣や広報部門が危機発生後の対応を想定した訓練を通じて、動きを確認・検証しておくことも効果的です。
一度、信頼や評価が損なわれてしまうと、回復は非常に困難になり、コストもかかります。売上や株価の下落にとどまらず、倒産に至る可能性もあります。日ごろからリスクに備え、万が一発生した場合には早期に対処できる対策を講じておくことが重要です。