サプライヤーとの連携強化に向けて、CDPサプライチェーンプログラムに参加する企業事例などを紹介した報告書を公表 CDP/HSBC
掲載:2024年11月06日
リスクマネジメント速報
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環境NGOのCDPはこのほど、金融大手のHSBCと共同で発表した報告書において、取引先なども含めたサプライチェーン全体から出る温室効果ガスの削減に取り組むことは、企業に利益をもたらすことが明確であるとし、サプライヤー(取引先)と連携することを推奨しました。サプライチェーン全体から出る温室効果ガスは「スコープ3」の区分となり、中堅・中小企業を含むため算出が難しいとされています。しかし、公表された報告書では、サプライチェーンの上流における気候変動関連の機会について企業は潜在的な財務上の利益を見積もっており、その金額は約1,650億米ドルだと記しました。
公表された報告書は「Strengthening the chain Transform the Norm Industry insights to accelerate sustainable supply chain transformation(サプライチェーンの強化:持続可能なサプライチェーンの変革を加速するための業界の洞察)」です。2023年に企業からCDPに開示されたデータは約23,000社でした。今般公開された報告書は、このデータを用いて特にサプライチェーンの上流に焦点を当てた取り組みの必要性や、CDPが運営する枠組み「CDPサプライチェーンプログラム」における企業事例などを掲載しています。
同報告書によると、CDPに開示した企業の56%以上は、温室効果ガスの排出量削減に向けて戦略的な計画を持っています。バリューチェーンを対象に取り組む企業もあり、それによって、スコープ3の排出量削減の取り組みと合わせて合計で136億米ドルの節約につながりました。また、サプライチェーンの気候変動リスクに関連する潜在的な財務コストは合計1,620億米ドルだとし、このリスクを軽減するために必要なコスト(560億米ドル)よりも2.9倍大きいと紹介、企業はこの課題に取り組むべき根拠が明確にあると伝えました。
一方、サプライチェーンの上流の排出削減目標を設定している企業は15%にとどまっています。自社の工場や事業所などから排出される温室効果ガスよりもサプライチェーン全体から出る量の方が平均して26倍大きいとされるため、大多数の企業は「隠れたコストや将来の規制圧力にさらされるリスクを負っている」と指摘しました。
CDPサプライチェ―ンプログラムとは、企業が取引先にCDP質問書を送り、取り組み状況を把握するなどして取引先とのエンゲージメントを通じた脱炭素化に向けた活動です。企業は例えば、取引先に電力使用量に対する再エネ比率を高めるといったことを求め、温室効果ガスの削減目標の設定と達成を支援します。企業事例では、取引先が太陽光発電など再生可能エネルギーを取り入れたとする成果が紹介されています。
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