東京都は3月4日、「カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル」(以下、「各団体共通マニュアル」)を公表しました。
4月1日から施行される「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」では、事業者の措置として、「カスタマー・ハラスメント防止のための手引の作成その他の措置を講ずるよう努めなければならない」ことが定められています。また、「カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)」の中でも、「各業界団体は事業者にとってよりどころとなるようなマニュアルをあらかじめ作成しておくことが望ましい」とされています。
そこで、今回発表された「各団体共通マニュアル」は、各業界団体が当該業界でのマニュアルを作成する際に盛り込むことが望ましい共通事項や、策定ポイントなどについてまとめています。
「第1章 総論」では、各業界団体にマニュアル策定の背景・目的を明示することを推奨しています。また、業界特有の事情や背景をふまえて「どのような行為がカスタマー・ハラスメントにあたる可能性があるのか」を定義し、対応方針も含めて会員企業に示すことが望ましいとしています。
「第2章 未然防止の取組」では、就業者側の適切でない言動が端緒となってカスタマー・ハラスメントが生じる可能性もあることから、各業界団体には業界マニュアルを通して、顧客対応の基本姿勢やクレームの初期対応について会員企業に啓発することを推奨しています。また、相談体制整備の考え方(カスタマー・ハラスメントの判断や発生時のために相談窓口・相談対応者をあらかじめ決めることなど)を示したり、教育や研修を促したりすることもポイントとなっています。
「第3章 カスタマー・ハラスメント発生時の対応」では、要求態度や要求内容、時間・回数・頻度などの観点から、カスタマー・ハラスメントに該当するかどうかの判断基準・目安をマニュアルに盛り込むことを推奨しています。そして、カスタマー・ハラスメントであると判断してから顧客対応を中止するまでの手順や、警察に通報する場合の流れの例を示しています。業界団体には「各団体共通マニュアル」の例を参考にしつつ、業界特有の場面別(対面、電話、訪問、インターネットなど)の対応方針をマニュアルに盛り込むとよいとしています。
「第4章 カスタマー・ハラスメント発生後の対応」では、カスタマー・ハラスメントを受けた就業者のケアが重要なポイントとなっています。また、各業界団体では、業界内で実際に発生した事例を共有し、再発防止に取り組むことを会員企業に促すよう推奨しています。顧客等の権利を不当に侵害しないことを前提としつつ、もしもカスタマー・ハラスメントの発生後に同一人物が来訪し、繰り返し迷惑行為をした場合には、退去命令や出入り禁止の措置を講じることも選択肢として示しています(業界によっては既存の法律を十分考慮する必要があるとしています)。
上記のほかにも、取引先へのカスタマー・ハラスメントの未然防止や、企業間取引におけるカスタマー・ハラスメント発生時の対応などについても、業界団体のマニュアル作成に盛り込むとよい点がまとまっています。
都は各業界団体に対して、以上のようなことがまとまっている「各団体共通マニュアル」を参考にしながら業界マニュアルを作成し、各業界の会員企業に提示するよう求めています。