電気の供給状況が分かるスマートメーターは全世帯・全事業所に導入され、2024年度末までに設置が完了する見込みです。スマートメーターから得られるデータを電力データといい、自治体の防災業務への利活用が期待されています。2023年9月には各社の電力データを一元的に蓄積する電力データ集約システムの運用が開始されました。一方で、電力データの利活用に関する情報について自治体が入手できる情報は限定的であったとし、経済産業省資源エネルギー庁は4月1日、自治体向けに防災業務における電力データ利活用マニュアルを作成、公表しました。
マニュアルでは、自治体が電力データを利活用するシーンとして4つのユースケースを挙げています。具体的には、通電情報による重要施設(避難所や病院など)の運営支援▽統計情報による停電エリア化情報および停電率の可視化▽在・不在推定情報による救助支援や被災者特定支援▽在・不在推定情報による避難行動要支援者の避難支援――です。
災害による停電では、例えば高圧配電線レベルでは停電が復旧していても、高圧線から個別の需要家(電力の消費者である各世帯など)をつなぐ低圧線や引き込み線が損傷して停電しているケースがあります。「隠れ停電」と呼ばれるもので、これをスマートメーターの通電情報により特定できると考えられています。
実際の活用事例として2020年9月の台風10号における武雄市でのユースケースが紹介されています。それによると、電力会社がホームページなどで公開している市区町村単位の停電情報よりも細かい停電範囲の情報を取得できたため、災害対応に役立ったと記されています。
災害発生時に電力集約システムを円滑に活用するには、システム利用申請などの事前準備が必要です。また、同システムは加工されていない電力データが提供されるため、あらかじめ防災業務においてどのように電力データを活用するのかを検討しておく必要があります。このほか、災害発生時のオペレーションを円滑にするため、電力データを取得するタイミングや操作方法などについても示されています。